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世界企業パナソニック 90年目の決断 第17回

日本企業は世界でどう戦うべきか?

パナソニックが中期経営計画に環境経営を盛り込む理由

2009年01月28日 12時00分更新

文● 大河原克行

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CO2だけでなく化学物質への対応も重要

 一方で中村グループマネージャーは、こんなことも語る。「環境対策というと、CO2削減ばかりに目が行きがちだが、もっと広い意味で捉え、バランスよく環境対策を推進していく必要がある」

 そのひとつがREACH規制への対応である。REACHは、EU(欧州連合)が導入を推進している化学物質規制であり、欧州向けに販売される商品に含まれる化学物質の安全評価を義務づけ、情報を登録するものになる。

 パナソニックは、欧州向けの商品だけでなく、グローバルすべての商品で同一基準の化学物質管理を行うほか、REACH規制の15物質だけに留まらず、今後、REACH規制で選定可能性がある1500物質についても把握を開始するなど、物質管理基準を刷新した。これにあわせて、管理システムのデータ構造を大幅に見直した。

 「法律で決まったから対応するというのではなく、我々から先行して取り組んでいくことが大切である。今回の取り組みも、『先行する』という観点から取り組む。RoHS対応の際には、業界各社がバラバラに取り組んだことで、サプライヤーの混乱を招くことになった。標準という形で取り組んでいくことが必要だと考えており、業界横断の標準化された化学物質伝達の仕組みを推進し、アーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)による基本フォーマットにあわせたデータ整理を行う」とする。

 また、パナソニックだけの取り組みでなく、同社と取引があるサプライヤーに対しても周知、協力を求め、同社の管理システム「GP-Web」により、約9000社の部品メーカー、さらにその上流にある材料メーカーにまで遡って、情報の共有/伝達を行うとともに、eラーニングシステムによる教育システムを新たに提供し、対応の徹底を図る。これらの情報は日本語、英語に加えて、中国語対応も図っていく考えだ。

 一方、環境に対する別の角度からの取り組みとしては、家庭用燃料電池コジェネレーションシステムや、三洋電機の子会社化によって推進する太陽電池による「創エネ」、また、同じように民生用、車載用、据え置き用などの二次電池による「蓄エネ」といった新たな取り組みもある。

創エネ第1号商品となる家庭用燃料電池。量産出荷式には、パナソニック・大坪社長以下、関係者が立ち会った

 特に家庭用燃料電池は「eco ideaを実践していく上で家庭用燃料電池は象徴的な製品となる。また、当社の創エネ第1号商品として、新たな領域に踏み出したものになる」と大坪社長が語るように、創エネ事業の中核商品となる。「次期中期経営計画においては、具体的なビジネスとして、指標を打ち出すことができる」と、大坪社長は事業拡大に意欲を見せる。

 2009年4月から東京ガスを通じて発売される「ENE FARM」は、その量産第1号となる商品だ。試算によると家庭用燃料電池コジェネレーションシステムでは、水を燃料にして電気を作る自然エネルギー利用によって、年間CO2削減量を1099kg削減できるという。

 同社は、1999年から燃料電池の開発に着手。2003年からは「燃料電池事業化プロジェクト」による全社プロジェクト体制に拡大し、ホームアプライアンス社、くらし環境開発センター、生産革新本部、半導体社、バナソニック電工、パナソニックテクニカルサービスが連動した開発、生産体制を確立している。

 2004年に出荷した第1号製品は首相官邸に設置。また、2005年度からの大規模実証実験の開始にあわせて、これまでに2005年度に74台、2006年度に88台。2007年度には123台の家庭用燃料電池を設置した実績を持つ。

 2008年度からは、実証実験が新たなフェーズへと突入するとともに、2009年度からの補助金事業の開始にあわせて、高効率化を実現した新たな商品を開発。2008年度からは、本社R&D部門と大阪府守口市の生産拠点に分散していた体制を、エコアイディア工場びわ湖に集約し、それにあわせて、6月からエコアイディア工場びわ湖で量産を開始していた。

 2010年度には約1万台強、2015年度には20万台の年間出荷規模を目指す計画であり、2008年度から2015年度にかけて、200億円の開発投資を計画しているという。

 パナソニックグループの環境戦略は、省エネを核としたCO2削減だけでなく、創エネ、蓄エネといった広い視野からの取り組みへと拡大し始めているのだ。

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