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世界企業パナソニック 90年目の決断 最終回

パナソニック株式会社 代表取締役社長 大坪文雄氏独占インタビュー

パナソニック――大坪社長が語る“今”とこれから

2009年03月04日 12時00分更新

文● 大河原克行

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2008年10月1日に、松下電器産業株式会社から、パナソニック株式会社に社名を変更して、まもなく半年を経過しようとしている。国内専用ブランドであった「ナショナル」を、世界統一ブランドのパナソニックへと一本化。社名とブランドをひとつにし、グローバルエクセレンスカンパニーに向けた大きな一歩を踏み出した。

その成果はどうなのか。また、創立90周年という節目に、社名変更、ブランド統一に打って出た理由はなにか。そして、2009年を最終年度とする中期経営計画「GP3」の進捗、三洋電機の子会社化に向けた取り組みはどうなるのか。パナソニック・大坪文雄社長に独占インタビューした。

――改めて社名変更、ブランド統一の狙いをお聞かせください。

パナソニック株式会社          代表取締役社長 大坪文雄氏

大坪  2008年10月1日の社名変更は、会社の形を変えることを目的としたものではありません。全世界を見回してみると、社名、ブランドが複数あるグローバル企業は希有であり、グローバルエクセレンスを目指す上では、松下の名前はローカルだといえます。個人のノスタルジーに浸るよりも、これから当社が大きく発展するには、より成長する可能性があるこのブランドに、全従業員の知恵、心、思い、パワーを結集し、社員の一秒の努力、一滴の汗も無駄にせずに、商品として結実させる。これこそが当社の発展につながる決断です。10年後、パナソニックは、創立100周年を迎えます。その時に、世界一の電機メーカーになることを目指す。そのためには、社名変更はいましかない。この経済情勢の激しい変化を見ても分かるように、3カ月、半年、1年の経営判断の遅れが致命傷になりますから、とても、100年目まで、社名変更を待つことはできない。将来の成長や、グローバルエクセレンスへの挑戦を考えれば、いまが最適のタイミングであったといえます。

 パナソニックへの社名変更は、より強い会社になるために、もっと世界で認知されるために、目線を「エクセレント」というところに置いたものです。社内にプロジェクトチームを設置し、社名変更の検討を開始した時には、「ブランドだけを統一して社名はそのままにする」、または「社名も変更し、ブランドを統一する」といった2つを議論してもらった。だが、我々の課題は、松下電器、ナショナル、パナソニックの価値が分散していたことにあった。価値分散の解決を求めるのであれば、社名もブランドもパナソニックにすべきである。社名変更とブランド統一は段階的に決めたのではなく、ワンセットで決めました。

――10月1日はどんな気持ちで迎えましたか。

大坪  10月1日が近づくにつれて、高揚感がますます膨れ上がった。9月30日の夜に、社名変更によって、パナソニックの全社員が一丸となってやってくれるだろう、というようなことを考えていると、高揚感がいっぱいになり、アドレナリンが沸々と出てくるのが分かり、なかなか寝付けませんでしたよ(笑)。私は、いつも、午後11時過ぎには布団に入るようにしているのですが、この日は、午前2時30分の時計を見た覚えがあります。パナソニックグループの世界中の社員が、グローバルエクセレンスを目指して努力するというイメージが、頭のなかに滾々(こんこん)と沸き上がり、また、オーディオ関連の事業場で、ナショナルのラジカセがパナソニックブランドになったこと、シンガポールに赴任した時に、「Mバッジ」の商品に、「パナソニック」のバッジを貼ったという、私の過去の様々な経験を思い出しました。1日の朝、本社に入るときに、新しいパナソニックの銘板を見て、本当に変わったんだと(笑)。そして、これからグローバルに打って出るんだという気持ちを改めて強くしました。

 また、午前9時から開く総合朝会の会場に向かう廊下では、会場のなかから、「我々もやるぞ」、「一丸となってやろう」という雰囲気が、廊下の方まで沸き出している感じがしました。

 グリニッジ標準時の10月1日0時00分に、全世界1万5000人のパナソニックの幹部社員に対して、私の名前でメールを発信しました。日本ではちょうど午前9時になります。メールを打った途端に、まずは日本の社員からの返信が続々ときた。そして、次に中国、アジア地域、中近東、欧州、米国と、時間を追うごとに世界各国のパナソニックの社員から返信がくる。この様子を見て、グローバルなワン・パナソニックとして、社員が一丸となっていることを実感しました。そして、返信の内容が、非常にポジティブであったことに、私は自信を深めました。社名変更を機に、自らも変わっていかなくてはならないという宣言から始まるメールがとても多かった。すばらしいポテンシャルを持った社員がいることを感じました。

次ページ 中期経営計画「GP3計画」に続く

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