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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第51回

アナリストが語る2009年のケータイ事情

2008年12月11日 18時30分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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2009年、ケータイ業界はどうなる?

 では、来年のケータイ業界はどうなるのだろうか。

 「2009年の前半から厳しい状況が続くと見ています。2009年は2008年からさらに10%程度低い3700万~3800万台のラインで維持できるかどうか。業界のアクション次第ですが、業界がスピード感を持って対応することが重要です。販売奨励金を廃止して、割賦方式になっていくと、ケータイの販売台数が下がります。つまり、販売台数が下がることによって、販売奨励金コストが下がり、キャリアの営業利益が上積みされる。これは公平感を欠き、黙認できるでことではありません」(木村氏)

 スピード感ある対応というのはつまり、端末の販売方式の変更で動けなくなっているユーザーをどうするかだ。例えばソフトバンクモバイルは決算資料などで解約率が1%を切っている点を指摘しているが、満足だから動かないだけでなく、ルール上動けないため、MNPがあっても流動性が下がってしまっているのが現状というのが木村氏の指摘である。

 「サッカーで言えば、皆がシュートしないで守りを固めている状況。0対0のドローで勝ち点1を狙いにいっているような感じです。ソフトバンクもiPhoneという強力なフォワードを投入したが、息切れしてしまっているような感があります。業界全体のコンテンツとして中核を占めている着うたのダウンロード数も落ちてきているのも、かなり気になります。あまりいい状況ではなく、危機感を持った方がいいでしょう」(木村氏)

今年最も注目を集めたスター端末iPhone。アメリカでは4GBの廉価版も登場すると噂になっているが、日本でも他のバリエーションが出てくるのだろうか?

 キャリアは停滞感をいかに打破していくかが来年のポイントになるのだろう。

 その点次世代PHSやWiMAX、そしてLTEのような新しい技術によるインパクトを「チャレンジ」として全面に打ち出し、ゴールを狙いに行く攻撃的な姿勢が、業界全体に必要だ。一方でテレビ電話のように、技術主導でニーズを発掘しきれなかったサービスが存在している。そういったサービスを改めて訴求し、ユーザーを巻き込んだコミュニケーションによって、新しいチャレンジとゴールを見つけていかなければならない。

 幸いなことに、iPhoneなどの登場で、ケータイは音声・文字・写真・動画などを扱えるコミュニケーションツールであることを思い出したユーザーも多い。新しい未来をキャリア、端末メーカー、社会にユーザー側から要請していくべきで、我々もケータイの明るい未来を作るフィールドに立っているつもりで、ゴールを狙いに行った方がいいのではないだろうか。


筆者紹介──松村太郎


ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET



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