松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第59回

「ダブル」から考えるワンセグライフの広がり

【今週の1枚】ワンセグ録画中のSoftBank 932SH。正方形のサブ液晶画面には、テレビ録画のアイコンが点滅している。ちなみに着信ランプは、ワンセグの受信強度を表している。青が良好。緑は良い、黄色になると放送受信が途切れがちになる

　ソフトバンクの2009年春モデル発表会で、世界のナベアツがプレゼンしていた端末こそ、AQUOSケータイ「SoftBank 932SH」である。今現在、ワンセグを楽しむケータイとしては最高の性能を誇る端末と言える。

　このケータイは、おなじみのサイクロイドボディを採用しながら「ずっとなくしたかった段差がなくなった」（孫 正義社長）という言葉通り、すらりとした通常の折りたたみ端末のデザインを実現している点で、とても選びやすくなったのではないかと思う。

　しかも、この端末は中身もすごい。なんとダブルチューナー、同時録画を搭載しているのだ。テクノロジーとして、ケータイに搭載するには過剰とも思えるこのダブルチューナーと同時録画機能。しかし、ふと自分の生活を考え直してみると、はたしてダブルチューナーが必要か、 といった疑問も生まれてくる。

　その疑問を解消すべく、金曜日の夜から深夜にかけて、932SHとともに過ごしてみた。

ダブルチューナーは快適なワンセグライフのため

　2009年2月6日に発売された932SHで注目を集めるダブルチューナー。2画面でテレビを視聴する事ができるようになっているが、まず使ってみて思ったことは、ワンセグなどのデジタルテレビが抱えていた「ザッピングがしにくい」使用感を見事に解消している点だ。

裏番組検索は、ワンセグの電波から番組情報を取得し、ザッピングの参考にできる。同じ場所でも、チャンネルによって電波強度が違うようだ。放送波が拾えないと、番組情報は取得できない

　2画面で視聴しているとき、チャンネルを変えると、音が出ていない小画面のチャンネルが変わる。そして中央のキーを押すと、小画面と主画面が切り替わる仕組みになっている。今視聴している番組は途切れず楽しみながら、他のチャンネルの様子を探れる使い勝手は、特筆すべき快適さだった。

横長の画面でのメニューと2画面表示。裏番組録画中は、小画面の枠が赤くなる

　ディスプレイが縦長の時も、サイクロイドで横長になっているときも、主画面・小画面だけでなく、ディスプレイを半分に分けて同じ画面サイズの2画面表示を楽しむ点も新感覚だ。

　ニュース番組や歌番組を聞きながら、スポーツ中継をチェックしたり、バラエティ番組を見ながら歌番組のお気に入りのアーティストの登場を待ったりすることもできる。もちろん盛り上がるシーンになったり、好きなアーティストが出てきたときには、主・副画面を切り替えればいい。

横長の画面で、2画面を並べてみた。データ放送も小さく縮小されて表示される。メニュー表示から、音声が出ているのが左画面、チャンネルが切り替えられるのが右画面であることが分かる

　ダブルチューナーワンセグの使い勝手について、932SHの端末開発担当者、パーソナル通信第二事業部 商品企画部 主事 奥田 計氏は次のように話す。

　「日頃見る番組の種類によっても、ぴったりあった使い方は変わります。開発段階の実験では、例えば、スポーツが好きな人の場合、好きなチームが勝った日のスポーツニュースをハシゴして、ダイジェストを何回も見たり、解説者のコメントを細かくチェックします。スポーツ中継があるときは、その中継を優先して見つつ、毎週見ている番組も映しておいて、シーンごとに切り替える使い方が見られました」

決定キーを押すと、小画面の映像を主画面に、主画面を小画面に入れ替える。音声は主画面で出続けている。チャンネル変更は小画面で行われ、気に入った番組を見つけたら入れ替える、と言う使い方ができる

　ワンセグのダブルチューナーが搭載されていたから、何か特別な使い方ができるといった提案ではなく、まず普段のワンセグライフで不便だと感じていた点を解消することが主眼にある。このスタンスは非常に評価できるし、932SHで体感できるほどワンセグが見やすくなっている点に現れている。

　薄型テレビの多くもダブルチューナーで2画面機能を搭載するが、リモコンで2画面ボタンが隠れたふたの中ににあったりすぐに利用できなかったりして、あまり使ってこなかった経験があった。ケータイだからこそ、より積極的に、わがままに選局をする使い方をきちんと実現している点で、非常に納得感ある機能アップだと感じた。