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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 第24回

ダビング10 そもそもおかしい6つの疑問

2008年07月08日 11時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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4.なぜコピー制御が始まったのか?


 もともと総務省令では、放送波にスクランブルをかけることは「有料放送」に限定されていた。ところが2002年2月に、情報通信審議会の「サーバー型放送システム委員会」で、なぜかコピーワンスの導入が決まった。

 このとき、コピーワンスのフラグだけでは無反応機に対応できないので、そのエンフォースメント(強制)の手段としてB-CASと抱き合わせにすることが決まった。コピー制御信号も一緒にスクランブル化すれば、その暗号の鍵がないと受信できないからだ。つまりコピー制御をメーカーに強制するために、B-CASを抱き合わせにしたのだ。



5.公共放送のNHKがなぜコピー制御をしているのか?


 世界の公共放送局に、受信制限やコピー制御をしている局はない。NHKの受信料も、すべての視聴者から(見ても見なくても)徴収するものだ。ところがBSデジタル放送では、受信料を払っていない者は見るなという意味の受信確認メッセージが出る。これはWOWOWやスカパー!と同じ有料放送で、見なければ払わなくてもいいことになり、NHKが不払い者に対して「見ていなくても受信料を払え」と訴訟を起している論理と矛盾する。

 放送法第9条9項は、NHKは「無線用機器の製造業者、販売業者及び修理業者の行う業務を規律し、又はこれに干渉するような行為をしてはならない」と定めている。視聴者が私的複製できないような規格をメーカーに強制することは、この「干渉」にあたり、違法の疑いが強い。「コンプライアンス」体制を強化したNHKは、この業務の根幹にかかわる違法行為の疑惑についてどう答えるのだろうか。



6.今後ダビング10はどうなるのか?


 ここまで見たように、ダビング10もB-CASも違法の疑いが強い。総務省は、これが2011年の地デジ完全移行のために安価な「5000円チューナー」を作る障害になるため、廃止したいと考えており、情報通信審議会もB-CASの見直しを決めた。公取委も、独禁法違反の容疑について関心を持っている。B-CASが廃止されると、ダビング10を強制することはできなくなるので、どちらももそう遠くない将来になくなるだろう。テレビを買うのは、それからでも遅くない。


筆者紹介──池田信夫


1953年京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退職後。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は上武大学大学院経営管理研究科教授。学術博士(慶應義塾大学)。著書に「過剰と破壊の経済学」(アスキー)、「情報技術と組織のアーキテクチャ」(NTT出版)、「電波利権」(新潮新書)、「ウェブは資本主義を超える」(日経BP社)など。自身のブログは「池田信夫blog」。



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