7月4日から「ダビング10」が始まった(関連記事)。その不合理な仕組みについては、本誌を始めいろいろなメディアで批判されているが、なぜこんな変なシステムが続けられるのかについては、あまり疑問をもたない人が多い。私はコピーワンスが始まる前からの経緯を知っているので、ダビング10について6つの疑問を改めて書いておこう。
1.ダビング10とB-CASは一体なのか?
かつて放送局は一体だと説明していたが、この嘘は「Friio」(フリーオ)の登場でばれてしまった。ダビング10は、放送波に「n回目」というフラグと呼ばれる信号をつけ、それをコピーした機器がフラグを認識して「n+1回目」と書き換えるだけなので、B-CASの暗号化システムとは別である。
だからフリーオのように、B-CASの出力信号に付いているフラグを無視してHDDに書き込めば、外すことができる。実はフリーオだけではなく、「画像安定装置」として売られている機器にも同様の機能がある。これらはまだコピーワンスにしか対応していないが、そのうちダビング10対応機が出てくるだろう。
2.コピー制御を外すのは違法ではないか?
著作権法(第30条2項)では、「技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変」を禁じている。しかしフリーオは、コピー制御フラグを除去も改変もしないで、単に無視する無反応機なので、違法ではない。もし無反応機を違法にすると、ダビング10の信号を認識しない昨年秋以前に製造されたテレビは、違法ということになってしまう。
3.ダビング10は電機メーカーの義務なのか?
ダビング10は、法的根拠のないARIB(電波産業会)の私的な規格にすぎないので、電機メーカーがそれに対応する義務はない。それどころか米国では、すべての無線機がbroadcast flagを認識することを義務づけようとしたFCC(連邦通信委員会)の決定が、裁判で違法とされた。スウェーデンのデジタル放送の受信制御システムも、欧州委員会によってEU指令違反とされた。
義務でもないダビング10にメーカーが対応しているのは、放送波がスクランブル化され、ダビング10に対応しない受信機にはB-CAS社がスクランブルを解除する暗号鍵を配布しないからだ。このため、電機メーカーはダビング10に対応せざるを得ない。B-CASは無料放送に必要のない暗号をかけて参入を制限するもので、独占禁止法(第3条)に違反する疑いがある。
(次ページに続く)
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