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時事ニュースを読み解く “津田大介に聞け!!” 第14回

欧米では「DRMフリー」時代の幕開け! この勢いは日本の音楽配信も変えるか

2008年01月14日 09時00分更新

文● 編集部、語り●津田大介(ITジャーナリスト)

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着うた好調の日本市場はうらやましい状況?


── ところで、米国の音楽業界の売り上げは増えていますか?

津田 売り上げは落ちていますね。今月頭に報道された米調査会社のニールセン・サウンドスキャンがまとめた資料によれば、2007年は前年に比べてアルバム販売枚数が9.5%減ったそうです。

 特に落ち込んでいるのはCDなどのパッケージで、15%減とのこと。一方、音楽配信は好調で、ダウンロードされた曲数が45%も増えたそうです。

 米国の小売りの現場を見てみると、Wal-martやBest Buy、Targetなどの大規模小売チェーンの寡占状態になっています。そのような店に並んでいるCDは「安くて売れるもの」(ロングテールの考え方で言えば「ヘッド」)ばかりなんです。

 一方、少数しか売れないロングテール部分は、オンラインのAmazon.comがおさえている。今後、本格的にDRMフリー化を迎えることで、ますます音楽配信の存在感が高まっていくのではないでしょうか。


── 日本の音楽業界の売り上げも落ちていますか?

津田 日本の場合は現状維持か、利益ベースでは少し回復しているかもしれません。

 CD販売は縮小、音楽配信は成長という傾向は、日本も同じです。日本レコード協会はまだ2007年の統計を出していませんが、CDの売り上げは数%下がると思います。一方、音楽配信では「着うたフル」のダウンロード数が前年の2倍以上に達する勢いです(関連リンク)。

 米国市場と違うのは、日本のほうがCDの落ち込み幅が少なくて、着うた系の伸び率が高いということ。さらに、音楽配信における、曲単価が高いというのも大きいです。

 だからトータルで見ると、日本市場は利益ベースでCDの落ち込み分を着うた系でフォローできている。音楽配信の伸びがCDの落ち込みをカバーできていない欧米のメジャーから見たら、日本はうらやましい状況になっているようですね。


DRMに関しても「欧米化」すべし


── DRMフリーという大きな流れの中で、日本のレコード会社はどのような戦略を取ればいいでしょうか?

津田 少なくともパソコン向けの音楽配信では、DRMフリーが世界的な流れになっています。日本もそれに追従すべきでしょう。着うたフルが売れているという状況は、個人的には短期的なカンフル剤にしかならないと思っています。

 さまざまなコンテンツが国境を越えて流通している中、本気で「コンテンツ輸出大国」を目指すなら、日本でしか通用しないケータイカルチャーを守り続けるのは、長期的な競争力を失うだけのように思います。もっとも日本の音楽市場は極端にドメスティックなので、それでいいという考え方もあるかもしれませんが……。

 もちろん「すぐに欧米並みにしろ」というのは無理でしょう。しかし、著作権の保護期間など、著作権者側に都合のいいところだけ「欧米化」を求めるのではなく、消費者の利益にもなるDRMフリーに関しても検討していってもらいたいですね。


筆者紹介──津田大介


インターネットやビジネス誌を中心に、幅広いジャンルの記事を執筆す るライター/ITジャーナリスト。音楽配信、ファイル交換ソフト、 CCCDなどのデジタル著作権問題などに造詣が深い。音楽配信関連の話題 を扱うウェブサイト“音楽配信メモ”の管理人としても知られる。この8月に小寺信良氏との共著 で『CONTENT'S FUTURE』を上梓。



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