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業務を変えるkintoneユーザー事例 第210回

地区代表が集うkintone AWARD 2023レポート中編

新入社員が家具職人を変えたアートワークス 弁当アプリをきっかけに年6千時間削減したミエデン

2023年12月14日 10時00分更新

文● 柳谷智宣 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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闇鍋ファイルサーバーを解消、弁当アプリから浸透させ年間300万円&6000時間を削減したミエデン

 4社目は、中部地区代表のミエデン 山田駿氏による「ゆるくつながり壁を壊せるチームへ」というプレゼン(関連記事:闇鍋ファイルサーバーをkintoneで解消! 弁当アプリから始めて年6000時間の時短でどうだ)。ミエデンは昭和42年に設立され、三重県を中心に事業展開するIT企業だ。自治体や医療機関へのシステム導入・サポートを提供し、社員数は550人。近年では自社データセンターによるサービスも展開する。

ミエデン 山田駿氏

 山田駿氏は新卒4年目、26歳で、kintone歴は2年。社内情シスを担っている。2020年に入社した山田氏は自治体営業部に配属されたが、ドキドキしながらドアを開けてみると、待っていたのはカオスな職場だった。

 まずは、闇鍋ファイルサーバー。顧客ごとの案件情報のファイルには、似た名前のファイルがいくつも並んでいる状態。大事な情報は先輩の脳内だけにあり、そもそも情報共有もされていない。

入社した山田氏が見たのは闇鍋ファイルサーバーだった

「初心者に厳しい環境で、非常に悩みました。2021年、営業部門にkintoneを5ライセンスを導入し、私がアプリ作成の担当になり、まずは、案件と活動情報を管理する2つのアプリを作りました」(山田氏)

 徐々にkintoneが浸透し、2022年には全社導入、山田氏は営業部門から情報システム部門のkintone担当へ異動した。その際、上司に「kintoneを使って、ゆるく繋がり、情報の不要な情報の壁を壊す。そんなチーム作れたらいいね」と言われたそう。

 しかし、超アナログなシステムと運用という壁が立ちはだかる。平成生まれのシステムは「平成35年」という存在しない時間を刻み続け、弁当の注文システムも古すぎで誰もメンテナンスができない。古いブラウザでしか動かないので、動作が遅いという課題もある。

 データセンターの入館の手続きのフローもネックだった。社内の人間もデータセンターへ入館する際には申請が必要になるが、これが紙。そして、上司の押印が必要で、社内便で送る必要があり、1~2日かかってしまう状態だった。

「さらに、『は?現場でアプリ作んなきゃいけないの』といった声からはじまり、情シス部門がアプリを作ると、『現場の運用を知らないのにこんなおもちゃみたいなもの作ってくるんじゃないよ』、『そんなのは人、時間も金も全部無駄だよ』と言われ、最終的には『いや、ちょっと新しいシステムミスすると怖いからもうログインするのやめとくわ』という声も聞こえてくるようになりました。私、挫折してしまいました。IT企業なのにIT使いこなせてないやん」(山田氏)

システムも運用も課題が山積みだった

 山田氏が上司に相談したところ、昼食の注文アプリをkintoneで作れば、強制的に使ってもらえるんじゃないかとアドバイスを受けた。旧注文システムの機能に加えて、写真や口コミも載せられるようにした。さらに、初めてkintoneを触る人でも迷わず使えるように、ゆるいイラストやかわいいイラストをちりばめた使い方ガイドも作成した。ユーザー間でコミュニケーションが生まれることを狙ったのだ。

kintoneへの誘導とコミュニケーションの場を作るために弁当注文アプリを作成した

「この取り組みから、どんどんkintoneにチャレンジする人が増えました。私たち情シスは、チャレンジしてくれた人を1人にしないために、部署を越えてゆるく交流するワークショップを始めました」(山田氏)

 ワークショップでは、kintoneの基本的な話から、日々の業務のモヤモヤなどを共有。ここで、皆がアナログ運用をしんどいと思っていることに気が付いた。

kintoneにチャレンジしてくれた人を支援するためにゆるいワークショップを開催

 そして、皆で壁に立ち向かおうと、課題だった入館申請のアプリを作成。従来は1から2日かかっていた業務フローが今では最短5分で済むようになった。さらに、従来はFAXで送られてきた顧客の入館申請も関連サービス「フォームブリッジ(トヨクモ)」を使い、kintoneに直接入力してもらうことにした。

「最終的に社内の申請書を70種類ほどkintoneに集約させました。総務や人事、経理部の皆さんと力を合わせて作り、旧システムは廃止。年間300万円の経費削減と承認時間の6000時間をばっさり削除することに成功しました。もう、kintoneはお金の無駄、といった声は聞こえません」(山田氏)

kintoneと関連サービスを活用して大きな導入効果を実現した

 今後は「全社員業務改善人材化計画」を進め、kintoneを軸に業務を改善していく予定だという。

「実は、7月に今まで別々の文化だった会社がひとつになり、再びカオスな現場になっています。規模に合わないため、サイボウズOfficeを解約するのですが、『システムも運用も全部違う!』『サイボウズOffice止めないで…』という声が寄せられています。これらの課題に対しても、今後はkintoneを軸に改善し、より楽にしていければいいなと考えています」と山田氏は語った。

 次回は、後半の5番手、北九州市役所の井上氏と、ラストとなるモリビの植田氏のプレゼンをレポートする。

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