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業務を変えるkintoneユーザー事例 第213回

高難度のDX推進は“本当のアジャイル”で

一度は失敗したシステム化 ― KADOKAWAの電子書籍事業におけるkintone導入の軌跡

2024年02月07日 09時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 2023年11月、サイボウズの年次イベント「Cybozu Days 2023」が幕張メッセにて開催。2023年はマジカルDXツアーと題して、DXへの魔法を学ぶためのさまざまなセッションや展示が展開された。

 本記事では「高難度業務のDXを実現!KADOKAWAグループから学ぶ電子書籍事業へのkintone導入舞台裏」と題したセッションの様子を紹介する。

人もお金も時間もかけて上手くいかなかった電子書籍事業のシステム化

 セッションの冒頭、デジタル営業局 デジタル営業部 シニアエグゼクティブの大塚和重氏がKADOKWAグループと電子書籍事業について説明した。

デジタル営業局 デジタル営業部 シニアエグゼクティブの大塚和重氏

 KADOKAWAグループは、出版や映像、ゲーム、Webサービスなどを展開する総合エンターテインメント企業。ASCII.jpを運営する角川アスキー総合研究所もKADOKAWAグループだ。このうち電子書籍事業は、全売上の55%を占める出版セグメントに属しており、電子書籍化しているアイテムは実に10万点以上。紙の出版が厳しいと言われる中、電子書籍は年々売上が伸び、継続して成長している。

成長著しい電子書籍業務の現状

 電子書籍の特徴のひとつが、定期的にフェア、いわゆるセールを実施することで売上を伸ばすことだ。KADOKAWAが毎年実施する大型フェア“ニコニコカドカワ祭り”では1万点以上のアイテムを割引、これ以外でも年間大小400以上のフェアを開催する。

 フェアの実施では、企画の準備から対象アイテムの選定、各ストアへの連絡といった一連の業務があり、振返りも含めPDCAサイクルを回していたが、各段階でさまざまな課題が発生していたという。たとえば、アイテムの情報はあちこちに分散し、Excelベースで作業を進めるため人為的ミスも発生しやすく、ダブルチェックのための担当配置で負荷がかかるなどだ。

フェア実施における主な業務

データの分散や人的ミスなどさまざまな課題が発生していた

 これらの課題を解決すべくシステム導入を決定。コンサルタントを含めて内外の人材を投入、段階毎にレビューもし、費用も時間もかけた。しかし、10か月に渡り取り組んだシステム化は上手くいかなかった。

 業務の流動性が高く、かつ複雑で「高難度であることは分かっていた」と本プロジェクトのIT側の責任者である齋藤嗣朗氏は振り返る。

KADOKAWA DX戦略アーキテクト局 ディレクター/エンタープライズアーキテクチャー 齋藤嗣朗氏

 そうこうしている間に期が変わり、プロジェクトは一区切りに。人事異動もあって再検討まで少し時間が空いたが、その間にも事業は急激に成長し、日々の業務やプロセスは変わっていった。

プロジェクトを内製化し、目標も再考、4か月で辿りついたkintoneへの道

 検討再開するにあたって、プロジェクトのメンバーを絞り、業務側の経験豊富なプロフェッショナルを専任化。新たなプロジェクトチームで報告書を見ていくとやっぱ厳しかったという結論に。

 丁寧につくられているが、あまりにも巨大過ぎて「いくらつぎ込んだら実現するのか」という内容だった。そこでシステム化によりいつまでに何を得たいのか、改善当初の目的に立ち返った。

 再検討ではまず、排除すべきプロセスを明確化した。長期検討では複雑・壮大なシステム計画に陥って、方向転換も難しくなり、高リスク化を生んでいた。システム化の対象も、必要領域である「フェア業務の管理」に絞った。また、このタイミングでコンサルテントに離れてもらい、内製化を強化、“実”を取る形に切り替えた。

 こうした検討を経て、目標達成の方針を「短期間」「低コスト」「低リスク」に再設定した。

目標を「短期間」「低コスト」「低リスク」に再設定

 次にシステム化を確実に行うために、優先度を細分化した。「細分化が非常にポイントで、やれる、やりたいことをとにかく切り出す。素早く立ち上げないと、どんどん業務が変わってしまう。そのために4つの優先度を設けて、開発スタイルも当初から一次から二次、三次まで見越した」(齋藤氏)。

 一次開発で土台をつくり、二次、三次と拡張していくというやり方にマッチし、必要な機能を短期間、低コスト、低リスクで構築するのに最適だったのが“ローコード開発プラットフォーム”である。

 KADOKAWAでは、現場からの細かい要望に応えるためにフルスクラッチのシステムを選択することが多かったという。今回はフルスクラッチでは、事業のニーズに追いつかないと判断。パッケージも機能要求に合致するものはなく、ローコード開発プラットフォームにチャレンジした。

 ローコード開発プラットフォームも数多く存在しているが、KADOkAWAで重視したのは「国産の安心感、何よりもエコシステム」だと齋藤氏。パートナーが豊富なkintoneを選択し、その中から腕のある会社を見つけ出そうと判断した。

KADOKAWAによるローコード開発プラットフォームの比較、kintoneが抜けていたという

 ベンダーはM-SOLUTIONSに決定し、最後まで不安であった、電子書籍やフェアに紐づく30万件以上のデータをkintoneで扱えるかという課題にも、根気よく付き合ってくれたという。

 再検討からここまで4か月、RFPまでも至らなかった前回のプロジェクトと比べて半分以下の期間で調達までたどり着いた。コストも外部依存していた前回から3割に抑えられた。

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