業務を変えるkintoneユーザー事例 第205回
パッケージと比較し940万の導入コスト削減、作業時間も年320時間削減
一度は流れた導入 kintone愛で覆した鶴ヶ島市役所職員の物語
2023年10月13日 09時00分更新
kintoneのユーザー事例を共有しあうイベント「kintone hive tokyo 2023」の5番手として、埼玉県鶴ヶ島市役所の中嶋英行氏が登壇。同氏によるセッション「kintoneに恋して~ワタシがkintoneユーザーになったワケ~」のレポートを紹介する。
高齢化に伴い増える介護認定申請と作業量
中嶋氏は、埼玉県鶴ヶ島市役所の介護保険課の職員として、保険料の徴収を担当している。介護サービスを利用するにはさまざまな手続きが必要になる。申請を受け付けた後に、訪問調査をし、医師の意見書を介護認定審査会に通し、介護度を決定することで介護サービスが利用できる。
介護保険課の課題は、高齢化だ。介護認定申請件数は年を追うごとに増え、このままでは介護保険が崩壊するとも言われている。比例して、介護認定審査会に関わる業務量は増加している。大量の資料を印刷する必要がある上に、資料には個人情報が含まれているので、年間100回近く開催される審査会の後に回収して廃棄しなければならない。さらに、申請件数が増えたことで、ケアマネージャーからの問い合わせの電話も増加。担当者は二人いたものの、どうしようもない状況に追い込まれていた。
振られてしまったけど、気が済むまでやろうと
「この状況を打開するため、パッケージシステムを入れてDX化することが決まりました。情シス部門にパッケージシステムの相談をしたところ、それkintoneで作ったらどうですか、と提案がありました」(中嶋氏)
行政職員限定のkintoneコミュニティ「ガブキン」を紹介され、早速参加。中嶋氏は、アプリをつくる楽しさにのめり込み、夜な夜なkintoneを触っていたそう。そのおかげで、プラグインや連携サービスも使い、パッケージシステムの機能を再現し、自分たちに必要な機能を盛り込んだシステムが完成した。しかし、そのタイミングで情シス部門からkintoneの導入はなくなったと宣告された。
「市のDX計画の中でkintoneの優先順位が低かったのかなと思ってます。片想いしていたのに振られてしまった状態で、どうしようかと悩みました。それでも、仕事ではなくても気が済むまでやろうと続けることにしました。まず取り組んだのがkintone資格の取得です。2022年の3月と4月に、アソシエイトとアプリデザインスペシャリストの資格を取得しました」(中嶋氏)
他のユーザーがどういう使い方をしているのかが気になったので、「スナックジョイゾー」に申し込んだ。ジョイゾーはkintone専業のSIで、サイボウズのパートナーでもある。月に1回、kintoneユーザーやパートナー、ジョイゾーメンバーが交流できる場を開催しており、中嶋氏も参加したそうだ。
「いろんなユーザーさんのお話を聞き、私の状況も聞いていただいた中で、もう一度、市役所に話をしてみようと前向きな気持ちになりました。今度はアプローチを変えて、政策部門に話してみました。パッケージよりもkintoneの方がコストが安い点が認められて、ついに導入が決定しました」(中嶋氏)
その際、「絶対に成功させろ」と言われたそうだ。そのための準備をしてきた中嶋氏は、すべてお任せくださいと、即答。最初に取り組んだのが全3回のハンズオン研修会だ。kintoneアプリを作る楽しさを知ってもらうために企画し、毎回15名程度が参加、ワイワイと勉強してもらった。
将来的に全庁的に横展開した時にも使えるよう、ガバナンスを最初から用意した。明確なkintoneの利用ルールを策定し、kintone管理者による一元管理を行った。もちろん、本番運用とテスト用アプリを分けて、承認方式によるアプリの棚卸しも行っている。
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