時短で帰るママに対して周りもどう接していいかわからない
――制度がきちんと運用されるには、上司と周りの理解が必須ですが、それは人に依存しますよね。
大手SIer女子:家族持ちじゃない上司は時短の制度自体を知らないので、控除金額が違うのを私に聞くんです。でも、働いてなんぼの会社、リリース前にとにかく人を投入して、成功させてきた会社は、短い時間で効率の高い仕事をすることに対しての評価ができてません。制度があっても、結局ダメなんです。時短の制度はあるものの、時短という働き方に対してのケアは少ないとは思っています。
――確かにその傾向はありますね。
大手SIer女子:あと、私は部署が変わったときがきつかったです。今までは事情を知っている同僚やパートナーに頼んで、なんとか回せていたんですが、それができなくなりました。しかも若い人は結婚や子育てを経験していないので、時間通りに帰ってしまうおばさんに対して、理解がないんです。そういった若い人は粋がっているところもある分、優秀なので、私はどんどん抜かされてしまいます。チームの一員でありたいと思っているのに、メンバーに理解がないと、存在意義がどんどんなくなってしまいます。必死に仕事してたら、仕事も中途半端、子育ても中途半端で、なにが自分にとって重要だか、わからなくなってきました。
大手情シス女子:確かに今のメンバーだったら、そのままリモートワークできる気がするけど、メンバー変わってしまったら、すごいつらいのかもと思いました。
大手SIer女子:今、私がいる部署はママが多いです。だから、早く帰るママをカバーするのが当たり前になっています。早い時期にワーママだった人が開拓して、こういう部署ができたんですけど、そうでない部署だったら、時短で帰るママに対して、周りの人はどう接していいかわからないと思います。
――小さい企業だとそこらへんは楽なんでしょうか?
スタートアップ女子:うちの会社は7人しかいないので、個人の状況をみんな把握できています。だから、時短して、その人がきちんと仕事が終わるかどうかがわかるし、できない場合にカバーできる体制もあります。逆に言うと、小さい会社なので、こうしていかないと回らない。大きな会社で働いたことがないので、わからないけど、こういう体制を部署レベルで作ったら、うまく回るんじゃないかと思います。
正直制度に甘えている人もけっこういる
――女性の働きにくさをテクノロジーでカバーできるところはあるのでしょうか?
大手情シス女子:テクノロジーはかなり進化していて、うまく使えばいろいろな課題をカバーできるようになっています。でも、人と制度が変わらないとうまく使えません。リモートワークにしても、理解ある上司がいればチャレンジしてみればという話になりますが、理解がなければ甘いこと言ってるなという話になる。制度面でも「上司が認めた場合に限る」みたいなグレーゾーンがけっこうあり、人の裁量が運用に影響を与えていると思います。
大手SIer女子:うちも在宅勤務制度はなんとか作ろうと試みているけど、金融系のシステムを作っているというのあって、セキュリティの問題にぶちあたります。あと、うちの場合、在宅勤務OKだと、働き過ぎちゃうことに対する管理ができなくなる方が大きい。在宅勤務だと、働きすぎてしまって、労災の管理ができなくなる。この2つの課題で、在宅勤務の制度はなかなかできません。できたとしても、いろんな条件付きになると思います。
――実際に在宅勤務している立場だとどうでしょうか?
在宅ワーク女子:私は家にいるときはつねにパソコンを開けて、子供いる環境で仕事をやっています。自宅で24時間仕事できてしまう。もちろん、介護やら、幼稚園の行事やらには行けるので、母親としては恵まれているんですけど、一方で子供にYouTubeずっと見させて仕事しなければならないというのは、葛藤があります。
――つねに働けてしまうと労務管理は難しいですね。
大手情シス女子:うちの会社は日本の大手メーカーなので、制度としてはものすごく充実しています。労組も強いし、時間管理もしっかりしています。先ほどは無制限で働けてしまうがゆえのつらさという話が出てきましたが、うちは時間管理が厳しいがゆえに仕事のやりくりができず、疲弊してしまう人もいます。そんな戦っている人もいる一方で、正直制度に甘えている人もけっこういます。効率の悪い人にお金を払う残業代という制度自体がそもそもおかしいと思います。
スタートアップ女子:前の会社でも、仕様書内の漢字が間違ってないか、Ctrl+Fで夜遅くまでずっと置換しているような人がいました(笑)。もちろん、会社はそういう人たちに対しても当然残業代を払っています。時間管理はやっているんだけど、その時間でなにをやっているかまでは会社は管理していません。
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