VFDと真空管を結びつけた「マジックアイ」
―― VFDが印刷技術の一種で作られているということは、もっと小型化したり、ほかのタイプの真空管も作れるわけですよね?
遠山 そうですね。これからの話ですけど。
―― では、VFDで真空管が造れると踏んだ理由はなんでしょう?
三枝 考えてみたら、蛍光表示管と真空管は同じ構造なんですよね。中を真空にして、電子が飛び出して、蛍光体に当たって。それを制御すれば真空管になるんじゃないかなと思って。
ノリタケ伊勢電子の公式動画「90秒で分かる! 蛍光表示管(VFD)とは?」。確かにフィラメント(カソード)、メッシュ(グリッド)、蛍光体(アノード)という構造は真空管と同じ。 |
―― それはどなたの発案ですか?
(全員、三枝さんを指差す)
三枝 その昔「マジックアイ※1」という真空管があったんです。60~70年くらい前の話ですけど。
三枝 ラジオのつまみを回します。そうすると同調しますよね。その時に電気信号を表示管のグリッドに送って、猫の目のように変わる素子があったんです。同調したことを目で確認するための素子なんですね。
※1 ぎょっちさんのマジックアイ紹介動画。日本では「同調指示管」とも呼ばれていた。 |
―― これが単体の素子として売られていたんですか?
三枝 そうなんですよ。子供のころ、なぜか知らないけど非常に安い値段で秋葉原に転がっていたんです。それを何本か買ってきて、これは蛍光する素子なんですけれども、増幅の作用もあるんじゃないかなと思って。そしたら、したんですよ。
―― 増幅素子じゃないのに?
三枝 ええ。でも、誰が見ても真空管の格好をしているんですよ。大きさも真空管と同じくらい。インターネットで探せば出てきますよ。6E5という名前の真空管です。
―― マジックアイが光る理屈はVFDと同じなんですか?
三枝 構造はまったく違うけれども原理的には同じですね。もっともブラウン管も同じですけどね。電子が蛍光体に当たって光るのは。そんなことがあったので、ノリタケさんのVFDを見て、グリッドでうまく電子を制御すれば、増幅もできるんじゃないかと。
(次ページでは、「VFD応用にノリタケは半信半疑だった」)
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