四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第139回
半世紀を越えて新製品が出たのは、音楽家のためだった
「真空管はいいことない」―それでも「Nutube」が出た理由
2015年02月14日 12時00分更新
いまの設備で真空管を造るとしたら
―― Nutubeの研究に着手したのはいつ頃ですか?
三枝 もう数年前ですね。真空管を作ったらどうかという話は、もっと前からあったと思うんですが、実際に造ることも視野に入れて、具体的に考え始めたのは。だんだん真空管が手に入らなくなって、高くなってしまうんじゃないかということで。
―― その当初からVFDで、ということだったんですか?
三枝 そうとは限りません。というのは、いま製造設備を持っている所がどこかにないかなと思ったんですね。真空にして電極を閉じ込めるような設備を持っているところが。昔は日本にもいっぱいあったんですよ。でも、もう20~30年前に、どこも製造設備は廃棄しているんですね。
―― 邪魔なだけですからね。
三枝 それで、いま造るとしたら、もっと別の方法があるんじゃないかなと思って。真空管というのは、空中に電極が浮いているんですよ。空中に構造物があるなんて、いまなら考えられないですよね。それで目を付けたのがVFDなんですね。これは、いま風の工程で造られているんですよね。
遠山 これですけど。
―― (差し出されたNutubeを手にして)うわっ、こんなに小さいんですか。
三枝 これは一種の印刷技術を多用しているんです。
―― 2本分の真空管が入っていますよね?
遠山 12AX7※が2つ入った双三極管じゃないですか。あれと同じように2回路入っています。
※ 現在楽器用の真空管として多く使用されているもの。
(次回は「VFDの応用に至った理由」について)
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ
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