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今後も製品やサポートは「変わらず」と強調、戦略的協業の意義を説明

IBM、レノボへのx86サーバー事業売却の「なぜ?」に答える

2014年03月07日 06時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本IBMは3月6日、米IBMがグローバルで発表したレノボへのx86サーバー事業売却についての記者説明会を開催した。米IBMの事業部門責任者も出席し、x86サーバーの開発や提供、サポート/保守は、レノボ傘下になっても従来と変わらず継続する計画であることを繰り返し強調した。

 同説明会には、日本IBM 代表取締役社長のマーティン・イェッター(Martin Jetter)氏、米IBM x86/Pure Systems Solutions部門ゼネラル・マネージャーのアダリオ・T・サンチェス(Adalio T. Sanchez)氏が出席した。

日本IBM 代表取締役社長のマーティン・イェッター氏。急成長する国内x86サーバー市場でも特にIBMは高い伸びを示しており、その勢いを維持する構え

米IBMのx86/Pure Systems Solutions部門ゼネラル・マネージャーのアダリオ・T・サンチェス氏。レノボによる買収後はそのまま同事業部門トップに就任する予定

製品/サービスで両社が補完し合う関係に

 IBMでは1月23日(米国時間)、レノボへのx86サーバー事業売却計画を発表している(関連記事)。サンチェス氏によれば、両社の取引(売却/買収手続き)は今年末までには完了する見込み。

 この売却対象にはx86サーバー製品群(System x、BladeCenter、Flex Systemのx86ノード、NeXtScale、iDataPlexなど)だけでなく、データセンタースイッチ、さらに開発や営業から製造まで同事業部門の人的リソース、サポート/保守サービスの運用も対象となっている。

買収によりレノボが取得予定の製品群。x86サーバーを核とするソリューションやサポート/保守サービスも含まれる

 一方、System z、Powerアーキテクチャベースのサーバー(Power Systems、Flex SystemのPowerノードなど)、ストレージ、PureApplicationやPureDataを含むエンタープライズ向けシステム製品はIBMに残る。またIBMでは、x86プラットフォームのWindows/Linuxソフトウェアの開発やアップグレードも引き続き行うと発表している。

 また、両社製品が“構成要素”として混在することになるPureFlexなどの垂直統合型システムでは、お互いにコンポーネントを提供しあう協業関係となる。

垂直統合型システムにおける両社の協業。シャーシやx86ノードはレノボから、ストレージやPowerノードはIBMから供給される

 さらにレノボは、ストレージ(エントリーとミッドレンジ、テープシステム)、システムソフトウェア、HPCソリューション(Platform Computing)など、x86システム関連の製品/ソリューションについて、IBMとOEM契約や再販契約を結ぶ予定。

 上述のとおり、カスタマーサポートや保守サービスはレノボが引き継ぐことになっているが、売却/買収取引完了から5年間は、世界にサポート網を持つIBMからの保守サービス提供を継続する。イェッター氏は、既存顧客、新規顧客とも「(今後5年間の)顧客サービスに関しては、これまでと一切変更はない」と述べている。

「単なる事業売却ではなく、次なる高みを目指す」

 今回の事業売却について、サンチェス氏は「単なる事業売却ではなく、次なる高みを目指すコラボレーション」とその意義を説明する。

 サンチェス氏は、x86サーバー市場における激しい競争に勝つためには、「IBMの持つ優れた技術、データセンターのスキル、専門知識だけでは不十分。顧客ニーズへの迅速な対応、そして『規模の経済性』を追求することが重要だ」と語る。特に、コモディティ化の進むクラウド分野のx86サーバーで成功を収めるためには、それが欠かせないという。

 「PC市場で世界1位のシェアを持つレノボは、1四半期あたり1500万台のPCを出荷している。IBMは高い技術を持ち、レノボはサプライチェーンと『規模』を持つ。これらを融合させることで新しい能力が生まれ、市場での競争に勝てる『解』を見いだせる」(サンチェス氏)

IBMとレノボ、それぞれの果たす役割。サンチェス氏は、両社の強みを融合させると強調した

ローエンドを補完、製品ライン拡充で新セグメント獲得を狙う

 「レノボ傘下に入ることで製品の低価格化は進むか」という記者の質問に対し、サンチェス氏は直接の回答を避けたものの、「(大量のPCを製造している)レノボの購買力によって『規模の経済』をより効果的に発揮できる」と答えた。

 さらに「(両社の協業で)新しいセグメントに進出できると考えており、製品ポートフォリオ拡充を通じてより多くの市場を取り込む」(サンチェス氏)。具体的には、IBMでは現在ローエンドのx86サーバー製品を扱っていないが、レノボに移ることでその領域を補完し、HPCからローエンドまでの製品群を提供できるものとの考えを示している。ただし、レノボが現在提供している「ThinkServer」とのポートフォリオ統合などについては言明しなかった。

 今後「IBM SoftLayer」クラウドのインフラとして、レノボ製x86サーバーが優先的に採用されるのかという質問にも直接の回答はなかったが、「現在も(IBMが)大きな供給元になっている。(レノボが)大きなパートナーになることは必至だ」(サンチェス氏)とした。

 なおイェッター氏は、今回の動きは「これまでのレノボとの戦略的パートナーシップを拡充するもの」だという。2005年のPC事業売却以降、日本IBMでは長年にわたってレノボジャパンとの強い関係を保ってきたと語った。

 「レノボとは共通の顧客を持つなど、現在でも緊密な連携がとれている。今後も継続的なコラボレーションがあると確信している」(イェッター氏)

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