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データ、クラウド、エンゲージメントの分野について説明

変革を進めるIBMの存在意義は既存のエンタープライズとの橋渡し

2014年11月11日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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11月10日、日本IBMはプライベートイベント「THINK Forum」にあわせて事業戦略説明会を開催。昨今同社がフォーカスする「データ」、「クラウド」「エンゲージメント」の3つのテーマについて解説した。

3つの「戦略的課題」に投資と開発を集中

 ITの新時代を迎え、大胆な事業の買収・売却や積極的なアライアンス戦略を進め、事業ポートフォリオを刷新しつつあるIBM。説明会の冒頭、登壇した米IBMのケン・M・ケヴェリアン氏が、こうしたトランスフォーメーションのための「戦略的課題」として、3つの注力分野を説明した。

米IBM コーポレート・ストラテジー担当 シニア・バイス・プレジデント ケン・M・ケヴェリアン氏

 最初に披露したのは、ビッグデータやアナリスティックなどの「データ」分野だ。ケヴェリアン氏は、データを企業の競争優位性を確保できる“新しい天然資源”であると説明する。同社はビッグデータやアナリスティック分野において240億ドルの投資を進めており、2000人の専門家を使ってマシンラーニングテクノロジー「Watson」の開発を進めている。ケヴェリアン氏は「非構造データの中で、自然言語の解析を用いて、コンピューターで行間を読むとることができる。今までと違った深い洞察が可能になる」と語る。

 実際、Watsonはガンの治療やコールセンターの自動化などに役立っているほか、デスクトップ版を使うことでデータサイエンティスト以外のユーザーが手軽に利用できるという。また、先日はツイッターとの提携も発表。データ分析の価値をエンタープライズの分野にも提供できるようになると説明した。

 2つ目は、「クラウド」だ。ケヴェリアン氏によると、ハードウェアの利用効率を上げるというのはクラウドの一部であり、新世代のアプリケーションを迅速に開発すると共に、ビジネスプロセスの標準化に寄与できるというのが大きなメリットだという。この分野に関しては、昨年買収したSoftLayer事業をクラウド戦略の主軸に据えるほか、グローバル40箇所でクラウドデータセンターを構築。また、SAPとの提携、PaaSであるBluemixやSaaSのマーケットプレイス提供などを積極的に行なっているとアピールした。

 3つ目は、「エンゲージメント」だ。聞き慣れない表現だが、これはソーシャルとモバイル、セキュリティといった分野を包含したエリア。SNSやモバイルなどを活用した情報収集や効率的なマーケティングを展開すると共に、個人情報や企業の情報資産への高いセキュリティを確保するのが狙いだ。

 ここではアップルとのアライアンスが大きな鍵だ。ケヴェリアン氏は「アップルがコンシューマー分野で提供してきたものを、エンタープライズフレンドリーな形で提供できる」とアピール。さらにセキュリティに関しては、130カ国で150億のセキュリティイベントを毎日モニタして、企業の懸念に適切に応えられるという。

バックオフィスとつなげなければ意味がない

 こうした戦略的な課題に大きな投資し、ITの新時代をリードすると共に、既存のエンタープライズシステムとの橋渡しを行なえるのが、IBMの真の強みだという。「データクラウドなどの新しいチャレンジをしても、既存のトランザクションシステムやデータベース、バックオフィスとつながらなければ意味がない」とケヴェリアン氏は訴える。新規のプレイヤーは、既存のシステムについて知らない。しかし、長い歴史を持ち、新たなチャレンジを続けるIBMこそ、両者を結びつけることができる存在として、ユーザーが目をかけてくれるという。「真の意味でのハイブリッドの世界観を、お客様の価値として提供できる。これがIBMが特別である理由になりうる」(ケヴェリアン氏)。

 こうした強みとともに、ソフトウェア、ソリューション、サービスの自動化などで、より高い価値の提供を目指す。これを実現するには、企業のビジネスの文脈を理解することが不可欠になるという。

 ケヴェリアン氏はIBMがシステム構築を手がけたある病院の例を挙げる。「北米・カナダでは病院内が連携していないがため、みなさんが患者になった場合、おそらく異なるカルテを持った4つのチームから、同じ質問を4回されることになるだろう。これはかなりストレスがかかるし、時間の無駄だ」。これに課題を感じたある病院は、4つの部署を連携するコラボレーションアプリの開発をIBMに依頼し、その結果、スムースな引き継ぎと連携を実現したという。この結果、医者は1日あたり2時間の時間節約につながったとアピールする。

 ケヴェリアン氏は、今後はより企業のビジネスプロセスに適合すべく、業種・業態により精通していくと説明。そして、俊敏性とスピードを持って、IBM自身を変革していくのが方向性だ。

データ、クラウド、エンゲージメントなどIBMの変革とは?

 こうした3つの分野での変革やスピードとイノベーションを誘引するアジャイルな開発・運用を、IBM自体はどのように進めているのか? 続いて登壇した米IBMのリンダ・S・サンフォード氏は、自社での取り組みを紹介した。

米IBM エンタープライズ・トランスフォーメーション シニア・バイス・プレジデント リンダ・S・サンフォード氏

 アナリスティック分野では、営業部門のリーダーが現場の担当者を最適な形で配置するためにビッグデータを活用した事例や、離職の可能性のある従業員に対して先を見越した個別対応を実現するワークフォース分析などの先進事例があるという。IBMでは50名のデータアナリステリストが在籍しており、「単なるツールではない、ゲームチェンジの技術だ。IBMでは50名のデータアナリストが在席しており、リアルタイムに情報をフル活用し、意思決定できる」とデータ活用のインパクトをアピールした。

IBMでのデータ活用の変革

 また、クラウドに関しては、SaaSやPaaS、IaaSなどのハイブリッドクラウドインフラを推進している。開発・テスト環境をBluemix+SoftLayerに移行。「すべての新しいアプリケーションがクラウドが作られている。よりアジャイルに動くために、クラウドを活用している」」と語る。

 エンゲージメントに関しては、10万台以上のモバイル機器を展開すると共に、70以上のエンタープライズアプリをストアで提供。さらに「ifundIT」というクラウドファンディングを創設。「どんなモバイルアプリを開発すればよいか、社員が投票で決めている。700万ドルの投資を行なうことで、社員のモバイルアプリの開発を推進する」といった取り組みを進めているとのことだ。

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