アナログは決して、終わった世界ではない
話は変わるが、最近編集部には20代前半のスタッフが何名か加わった。
その一人が平成生まれの八尋。私が初めてレコードを買った年齢のころには、すでに21世紀が始まっていたことになる。きっと2000年問題も、ノストラダムスの大予言もまったく意識しなかったに違いない。彼らがいまレコードを聴くとしたら、どんな感想を持つだろうか。そもそも本物のレコードを見たことあるのだろうか。そこにどんな価値を見出すのか。そんな漠とした疑問も生じてきた。そんな経緯もあって、最新のHi-Fi機器を使って、アナログ音源を体験してみる企画を考えた。
試聴のためお邪魔したのは新横浜にあるラックスマンの試聴室。関連記事1でもアンプの比較試聴のため訪問している。過去に真空管アンプとアナログプレーヤーの組み合わせで素晴らしい音を聴かせてもらった経験(関連記事2)もあり、ぜひお願いしたいと考えた。
さて「最新のHi-Fi機器を使って、アナログ音源を体験してみる」とさらりと書いた。しかし読者の中には、アナログプレーヤーの最新機器なんてあるのかと疑問に思った人もいるかもしれない。
答えはYes。日本の量販店などからはトンと見かけなくなってしまったアナログプレーヤーだが、専門店に行けば、今でも展示があるし、欧州なども含め、マニア層を中心にアナログ再生の人気は高い。普及機はともかく一定以上の水準のHi-Fi機器であればいまだに数年に一度のタイミングで新製品が登場している。
また国内メーカーでもオーディオに力を入れているところであれば、現行カタログの一角にアナログプレーヤーを用意している場合が多い。ラックスマンも今回試聴する「PD-171」というモデルを提供している。PD-171には11月に姉妹機としてアーム交換が可能な「PD-171AL」が追加されたばかり。趣味性が高く高価な製品も多いが、熱心なファン層がいるジャンルでもあるのだ。
国内盤の新譜も一定数あり、集めるだけでなくぜひ聴きたい
── というわけで素晴らしきアナログ再生の世界に足を踏み入れていこうと思います。そもそも論として、LPとかドーナツ盤とか見たことあった?
八尋 「……素晴らしき(苦笑)。いえ知識としてはあったけど、実際に手に取るのは初めて。率直な感想としては、でかい。特にLP盤を持つと、レコードってこんな大きいものだったんだって驚きました」
── 確かに。よく考えたら自分も、初めてレコード買いに行って大きさに驚いた。それまでシングル盤しか見たことなかったので、12インチ(約30.5mm)のLPってインパクトあるなと。
八尋 「あともうひとつ感じたのは、レコードって再生機もレコード自体も中古店みたいなところで古いのを買って聴くものだと思っていました。ここに並んでいるレコードの中には発売されてそれほど時間が経っていないものも含まれていますよね」
── そうだね。それほど数は多くないし、限定版という扱いが大半だけどアナログ盤が同時リリースされる楽曲は多いね。タワーレコードのオンラインショップではフォーマットをかなり細かく絞り込めるので試しにLPレコードや12インチシングルレコードで絞り込んでみると、数千とかの単位でヒットする。
八尋 「レコードって言うとジャズとかそんなの思い浮かべがちですが、アイドルとかJ-POPとか国内アーティストの新譜も結構出てるんですね」
── あとはコミケとかイベント限定で、チャネルを絞って販売されるコレクターアイテム的なものも結構出ている。この中にあるのだと『涼宮ハルヒの憂鬱 激奏限定』とかはその類のもの。
八尋 「入手の難易度はちょっと高そうですね。レアものも含まれていると。とはいえ新品だけじゃなくて、ネットやオークションとかまで範囲を広げるとかなりの選択肢が選べるってことなんですかね」
最初に買う、本格的なアナログプレーヤーとして最適な「PD-171」
今回試聴した「PD-171」は2011年に登場したラックスマンのアナログプレーヤー。高トルクのACシンクロナスモーターを組み合わせたベルトドライブ方式を採用している。ターンテーブルは、アルミを削り出し、ダイヤモンドカッターで仕上げた5kgの重量級。スピンドル(中心の軸)も16mmと太く高剛性。滑らかで安定した駆動をサポートする。
一体型のトーンアームは229mmのショートタイプ。15mmと肉厚のアルミプレートの上に固定。ユニバーサル型でさまざまなメーカーのカートリッジ(針)を使用できる。カートリッジを取り付けるヘッドシェルは軽量なマグネシウム合金製。
回転速度は毎分33.3回転と45回転の切替式。±5%の回転数調整に対応。LED照射の反射式ストロボスコープによって、33.3回転と45回転を独立して微調整できる。回転スピードそのものを表示するので分かりやすく、操作しやすい。
本体サイズは幅465×奥行き390×高さ140mm。重量は23kg。手軽に使える機種だが、カートリッジ交換をはじめとした音質調整するための機構も用意しており、入門からその上を目指す人まで幅広い層に高い満足感が得られるはず。実売価格は30万円台半ば。
この連載の記事
-
Audio & Visual
第5回 ハイレゾでアニソン、オレたちならこれを聴く[2014年版] -
AV
第4回 やっぱりすごい! ガルパンOVAの「センシャラウンド改」を体験 -
AV
第3回 試練か至福か!? ラブライブ!で俺たちの耳力を判定 -
Audio & Visual
第2回 K-ON!、ハルヒ、そしてNegicco、アナログ盤も結構楽しい! -
Audio & Visual
第1回 ガールズ&パンツァーは、観るのはもちろん音を聞け -
Audio & Visual
第回 え~ぶい!(目次) - この連載の一覧へ