ソニー入魂の単品コンポーネント
「HAP-Z1ES」&「TA-A1ES」
最後にネットワークHDDプレーヤーの高級モデルであるHAP-Z1ESと、ステレオプリメインアンプのTA-A1ESを紹介しよう。
機能的には内蔵HDDが1TBとなる点以外はHAP-S1と同じで、有線および無線ネットワーク接続の両方に対応。前面の4.3型カラーディスプレーの搭載、操作のためのジョグダイヤルの採用なども同様だ。
サイズは幅430mmのフルサイズとなるので印象は随分異なる。入出力端子は、ネットワーク端子や増設HDD用USB端子、アナログ出力を備えるが、高級機ならではの点としてアンバランス出力とバランス出力の両方を備えている。
最大の違いは、当然ながらオーディオ回路。D/A変換回路は、DSDに最適化したアナログFIRフィルターなどの高性能フィルター群で構成され、左右チャンネル独立でさらに各チャンネル4個のフィルターユニットを差動合成で使用し、DSDの超高域ノイズを低減している。
そして、大胆な試みとして、ハイレゾ音源を含むあらゆる音源データをすべてDSD 5.6MHzに変換する「DSDリマスタリングエンジン」を搭載。前述したD/Aコンバーターの特性を最大限有効に活用するためのものだ。
人によっては、リニアPCMはリニアPCMのまま聴きたいという人もいると思われるが、発売時点ではすべての音源データはDSD 5.6MHzに変換される仕様とのこと。発売後のアップデートで「DSDリマスタリングエンジン」のオン/オフが選択できるようになる。音質の違いを確かめるなどマニアックな楽しみ方ができそうだ。
このほか、位相ノイズの低さに注目した低位相ノイズ水晶発振器をマスタークロックに採用し、シャーシを梁で補強。さらに底板に2mmと1.6mmの鋼板を2枚重ねて剛性を高めたFBBシャーシを採用する。
電源部のトランスは磁束漏れを低減する真空含浸処理を行ない、デジタル/アナログ独立で搭載するなど、ソニーの高音質技術を総動員して高音質を追求した。
また、圧縮音源やCDグレードの音源も高音質化する「DSEE回路」を採用。圧縮時に失われがちや高音域や微妙な音の余韻の消え際のような微小音を復元することに加え、32bitのDSPを使うことで一気に8倍オーバーサンプリングを行ない、ハイレゾ音源に迫るなめらかな音質を実現している。
それとペアになるステレオプリメインアンプがTA-A1ESだ。高音質化を徹底するため、一般的なプリメインアンプが備えるトーンコントロール機能など省略し、シンプルかつ最短経路での回路構成を採用。
プリメインアンプ部は回路面積を小さくでき、振動の影響を受けにくくする電子ボリュームICとフルディスクリート構成のバッファーアンプを組み合わせている。
パワーアンプ部はボリューム位置に合わせてバイアス電圧を可変することで、音楽のほとんどの時間をA級動作で駆動できる「スマートバイアスコントロール」や、1組のトランジスタで電力増幅を行うシンプルなシングルエンドプッシュプル動作でありながら、80W+80Wの大出力を実現した出力段とするなど、かなり力の入った内容になっている。
さらには、人気の高いヘッドフォン再生も重視し、専用のヘッドフォンアンプ回路を搭載。3段階のインピーダンス切り替えが可能で、さまざまなヘッドフォンの実力を存分に引き出せるものとなっている。こちらはヘッドフォンとのインピーダンス整合が適正ならばA級で動作する設計だ。
ここまで力強く解説したものの、今回は試聴できる機会を得ることができなかった。こうした高級コンポーネントにはよくあることだが、発売ギリギリまで音質チューニングを行なうなど、時間の許す限り作り込むためだろう。
ソニーが本気で斬り込んだ「ハイレゾ」の世界
今後に注目!
ソニーは、CDを超えるフォーマットとしてSACDを開発したメーカーでもあり、再生機器はもちろんのこと、プロの現場で使う機材や録音技術など豊富なノウハウを持っている。
SACDがビジネス的に決してうまく行かなかったこともあり、現在のハイレゾ再生については他社に出遅れている印象はあったものの、ここで大きく巻き返そうという強い意志がある。
それは今日までの発表でずらりと揃ったラインアップを見ても明らかだし、ハイレゾをより高音質で楽しんでほしいという心意気にも満ちている。
HAP-Z1ESとTA-A1ESはその頂点となるフラッグシップでもある。内容の充実度や徹底的にこだわった設計は紹介した通りで、早く製品の音を聴いてみたい気持ちでいっぱいだ。
簡単さと快適さを備える独自のスタイルを持ち、音質の点でも優れたソニーのハイレゾ製品群は、きっとこれからのオーディオの世界を大きく加速していくことになるだろう。
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