男性にとって「社会」という壁は高い
―― 私自身は、男性のお客さんが見出す「おおかみおとこがなぜ野垂れ死にするのか?」というところにはまったく思いが至りませんでした。映画では、“おおかみおとこ”が社会で生きられなくなったらいきなり野垂れ死ぬ。「社会になじむか、そうでなければ死か」というのは、ずいぶん極端な振り方だと思いました。
「社会になじむか、そうでなければ死か」というのは、もしかしたら男性のほうが良く考えるのかもしれません。実は男って、人生の選択肢が広そうに見えて意外に狭いと思うんですよ。周囲を見ていても、女の子はたくましいしバイタリティーがあって、生きる選択肢をどんどん広げている気がしていて。
男はおおむね、「勝つか負けるか」みたいなものが大きな価値観としてあって、勝たなきゃ存在意義がない的に、1かゼロかで考えてしまう。本当は、もっといろんな価値観や人生の選択肢があっていいはずなんだけど、子どもの頃から勝ち負けという価値観の中に放り込まれてしまうところがあって。「社会に出る、出ない」で問題を抱えるのはおおむね男ですよね。そういう中で生きていかざるを得ないというか。
(C)2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会
―― 男性は、女性よりも「社会」というものを強く意識したり、自分とを隔てる壁だと思ったりしがちなのでしょうか。
もう十数年前のことだから、今とは若干価値観が違うかもしれないけど、ある男性クリエーターさんがこんなことを言ってたんです。「男は大変だよね。女の子に告白するのに、でっかいビル建てて『このビルは僕が建てました。だから結婚してください』って言わなきゃいけない」って。そうしてまでやっと告白できるという、男の作法の無力さというか。
そういう勝ち負けに乗っ取った人生の選択肢しかないところが本当に困ったもので。「おおかみこども」の中には、そうした男の不器用さみたいなものも入っていると思いますね。
ええと……最初の質問は、「女性客が多かったという話も聞きました。女性の方はどんなふうに映画を見ていましたか?」でしたよね。脱線してしまい、すみません。それも様々だと思いますが、大きいのは「花の生き方をどう感じたか?」だと思います。これは年齢、未婚の方、既婚の方、今、あるいは過去に子育てを体験しているか、などによると思いますが実に様々でした。
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