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【2012年まとめ】Windows 8発売もPC市場は苦戦が続く

2012年12月30日 12時00分更新

文● 小西利明/ASCII.jp編集部

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 2012年のPC市場が冷え込んでいたことは、各種調査でも明らかだ。東日本大震災という未曾有の大災害に見舞われながら、PC販売は好調に推移した2011年に対して、IDCジャパンの市場調査によると、2012年度は序盤こそ好調だったものの、第2四半期以降は急減速し、Windows 8が出た今に至るも回復していない。

 そんな寒風吹きすさぶ2012年のPC市場について、掲載されたニュースから振り返ってみよう。

1月
多彩なUltrabookが登場

 記者自身が取材に行ったからでもあるが、2012年1月のニュースと言えば、「International CES 2012」に関連した話題が思い浮かぶ。CES自体は米国家電業界のイベントであり、PCはいまやその主役ではない(主役だった時期もあったのよ?)。実際2011年のPC市場世界シェアトップ5企業(ヒューレット・パッカード、デル、Acer、レノボ、ASUSTeK)は、1社たりともイベント自体に出展しておらず(発表会や独自イベントはあり)、「PCも手がける」家電メーカーであるソニーや東芝、サムスンやLGが、自社ブースの一角にPC新製品を展示している程度だ。

各社のUltrabook新製品が登場したCES 2012。左は日本でも発売されたASUS「ZENBOOK」、右は日本未発表のサムスン「Series 9」

 そんな中でもインテルブースや、独自に発表会を開催したAcerやASUSTeKは、魅力的なUltrabookの数々を出展していた。インテルの幹部は「ノートPCはすべてUltrabookになる」と豪語していたが、確かにノートPCはサイズを問わず薄型化していく流れになった。その気配が見えたのが2012年1月だったと言えそうだ。

15年続いたマイクロソフト最後のCES基調講演。それにしては心に残るメッセージもなく、寂しい退場となった

 一方で、すでにCESからの撤退を宣言していたマイクロソフトは、最後の基調講演でスティーブ・バルマーCEOがWindows 8をアピールしたものの、特に盛り上がる話題もなく、淡々と新製品を紹介して終わった。ビル・ゲイツ氏が基調講演を務めていた頃は、講演の最後には必ず直近の自社製品の話題から離れて、コンピューティングのちょっと未来の姿をイメージさせるデモを披露していて、記者はそれが楽しみでもあった。だが、バルマー氏に変わって以降はそういう要素も少なくなり、未来のコンピューティングに対するマイクロソフトの取り組みが、感じられないまま終わってしまったのは残念だ。

2月
日本市場が小さなローカル市場に落ちていく気配

 IT業界的には、2月は携帯電話の国際見本市「MWC」(Mobile World Congress)の月であり、PCに絞ると話題の少ない月だった。そんな中で記者の印象に残ったのが、日本HPが発表したUltrabook「HP ENVY 14 SPECTRE」(以下ENVY 14)だ。ただしそれは良い印象ではなく、日本のPC市場の今後に対する暗澹たる思いを感じさせられたからだ。

HP ENVY 14 SPECTRE

 詳細はトピックの記事を読んでいただきたいが、ENVY 14には日本語キーボードモデルが存在せず、英語キーボードモデルだけである。これについては日本HPの方々と何度も話をしたが、とどのつまり日本語キーボードモデルが存在しないのは、「別注のパームレストパネルを作るほど売れない」と判断されているからだと言う。ENVY 14のパームレストパネルは金属製で、キー配列が英語キーと異なる日本語キーを採用するには、別にパネルを作らなくてはならない。そのコストに見合わないと判断されたわけだ。

 売れないから日本語キーを付けてもらえず、日本語キーがないからますます売れず……、最悪の悪循環である。ベテランのPCユーザーが多いASCII.jp読者の方には「英語キーでもいいだろ?」と思う人もいるだろうが、その考え方はマイノリティだ。昔ある大手PC企業の方が、「日本で英語キーモデルを欲しがるのは500人くらい。でも声が大きい500人だから、出さざるを得ない」と苦笑交じりに語ったことがある。実数はもっと多いだろうが、日本市場における英語キー需要が微々たるものであることは事実だろう。

 それはともかく、HPのこの判断は、今後ワールドワイドなPC市場の中での日本市場の割合が小さくなっていくに従って、珍しくないものになる可能性がある。例えばAcerは、ENVY 14と同様に金属ボディーを採用するUltrabook「Aspire S」シリーズで、超が付くほど変態的なキー配列の日本語キーボードを採用してる。これは英語キーボードと同じパームレストパネルを使って、日本語キーボードに必要なキーを搭載する苦肉の策だが、使いにくいことこのうえない。これもまた、「独自のパネルを生産するほど日本市場には価値がない」と見なされている証拠である。

Aspire S7の変態キー配列。赤枠は特に変態的なキー配列。英語キーと同じパームレストに無理矢理日本語キーを収めたらこうなった

 幸いなことに、PCシェアトップ5のうち、デルやレノボ、ASUSTeKは、今でもきちんとした日本語キーボードを採用した製品を販売してくれている。しかし今後も世界の中で日本のPC市場が占める割合が減少していけば、彼らも判断を変えて、HPやAcerと同じことをし始める可能性はある。プレゼンスが低下するというのは、そういうことなのだ。

 記者などはもう20年以上日本語キーボードと付き合ってきたので、今さら英語キーに慣れるのは大変だ(特に[@]と[:]が要Shiftキーなのが大嫌い)。そうは言っても、今後魅力的な海外メーカー製ノートPCで日本語キーモデルが減っていく可能性を考慮すると、「今のうちに英語キーに、指を慣れさせなければいけないのかな……」と、暗い気持ちになる。ENVY 14はそんなことを考えさせられた製品だった。

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