四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第108回
DSD形式のネイティブ再生ができるDS-DAC-10の開発者インタビュー
楽器メーカーが「PCで最高の音を聴ける」作品を作ったわけ
2012年12月08日 12時00分更新
1bit DAWの開発用に使っていたDACを
ほぼそのままの形で発売
―― では皆さんのご担当からお願いします。まず永木さんは?
永木 私は今グループマネージャーで、MTRからMRシリーズまで、ずっとレコーダーの主にソフトウェアを担当してきました。「Clarity(クラリティ)」という1bitのDAWを研究で作っていたんですが、そのDSD再生部分を、DS-DAC-10に移植する仕事を、石井が担当しました。
―― Clarityは下高井戸のスタジオ※2にあるシステムですね。
※2 「G-ROKS」と呼ばれるスタジオ。かつてKORGの本社があった下高井戸のビルにある。
石井 そうですね。具体的にはDS-DAC-10のCPUのソフトウェア実装と、AudioGateのバージョンアップです。
―― AudioGateというのはDSDを他のフォーマットに、あるいはPCMをDSDに変換するソフトだったわけですけど、それがDSDのダイレクトな出力に対応したと。
石井 そうです。今回はDSDのままリアルタイムに出力できるようにということで。サンプリング周波数の切り替え部分にDSDを追加して、簡単に切り替えられるようにしました。DSDで出力するために特殊な設定が必要にならないように、これまでのAudioGateの使い勝手をそのままに追加しました。
坂巻 僕の担当は企画ですけど、まずMR-2000S※3の音がすごく評判が良かったわけです。それでAudioGateでCDをDSDに変換して、それをMR-2000SやMR-2※4に入れて聴くという方がいらして。
※3 1Uラックマウントタイプのスタジオ用1bitレコーダー。
※4 ポータブル型のマイク内蔵1bitレコーダー。
―― それはDSDの再生に対応したUSBインターフェースがなかったからですよね。
坂巻 それで「DSDに対応したUSB DACを出して欲しい」という要望がものすごくあったんですけど、先程のClarityの開発に使っていたUSB DACの試作機があったんです。MR-2000Sの回路をそのまま使ったものだし。だったらそれを出しちゃおうと。で、これがそれです。
―― なんかすごい簡単な話じゃないですか、それ。
永木 回路がまったく一緒という事ではないんですが、同じDAのチップを使っていますし、同じ設計者が同じ思想で作っているので、MR-1000やMR-2000Sと同じ系統の音がするようになっています。
―― ところで、これはなぜ入力がないんですか?
坂巻 開発用の試作機になかったからです。
―― なるほど。
永木 まだ録音用のソフトも作っていないからですね。ちょっと試作機を持ってきましょうか。この試作機を一人一台ずつ持って、色々デバッグしたりとかしています。
この連載の記事
-
第164回
トピックス
より真空管らしい音になるーーNutubeの特性と開発者の制御に迫る -
第163回
トピックス
超小型ヘッドアンプ「MV50」のCLEANは21世紀の再発明だった -
第162回
トピックス
欲しい音を出すため――極小ヘッドアンプ「MV50」音色設定に見る秘密 -
第161回
トピックス
最大出力50Wのヘッドアンプ「MV50」は自宅やバンドで使えるのか? -
第160回
トピックス
新型真空管「Nutube」搭載ヘッドアンプのサウンドはなにが違う? -
第159回
トピックス
開発で大喧嘩、新型真空管「Nutube」搭載超小型ヘッドアンプ「MV50」のこだわりを聞く -
第158回
トピックス
唯一無二の音、日本人製作家の最高ギターを販売店はどう見る? -
第157回
トピックス
「レッド・スペシャルにないものを」日本人製作家が作った最高のギター -
第156回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターを日本人製作家が作るまで -
第155回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターは常識破りの連続だった -
第154回
トピックス
てあしくちびるは日本の音楽シーンを打破する先端的ポップだ - この連載の一覧へ