X1のアイデンティティの中で、X1 Carbonから唯一消えているのは、ディスプレー部のカバーガラスとして、タブレットなどではおなじみとなった「ゴリラガラス」を採用していたことだ。X1ではディスプレー面に強固なガラスを使い、天板全体の剛性確保とディスプレーの保護、美観の実現をそれぞれ狙ったわけだ。X1 Carbonはそうではないが、天板の剛性は「より強く」なっているという。実際指先で動かしてみても、不自然なたわみなどの不安を感じさせる要素は、まったく見当たらない。
理由はもちろん、天板の素材に「カーボン」を使っているためだ。「X1 Carbon」の名前はこれに由来する。カーボン素材の使用は、ThinkPadシリーズとしては初めてではないが、X1 Carbonではより高品質なカーボン素材を樹脂層を挟む形で使うことで、天板の「しなやかだが堅牢」である形状を生んだ。カーボン繊維の目などが見えるわけではなく、伝統的な「ThinkPad」的質感の仕上げだ。
もちろんゴリラガラスがなくなったので、ディスプレー表面への直接的な衝撃への耐性はない。しかし、タッチのないクラムシェル型のPCだから、ディスプレー面をそこまで保護する必要はあるまい。また、ゴリラガラス採用の副作用であった「強い光沢感」がなくなり、非光沢の「ThinkPadらしい」見栄えに戻った。画面が見やすくなったのは、ビジネスユース向けとしてはプラスになった、と感じられる。
操作感は上々
インターフェースの削減は気になる
X1シリーズの良さは、大型ディスプレー+大型タッチパッド+フルサイズキーボードの「操作感の良さ」であり、その点については、X1 Carbonでもまったく変わっていない。
キーボードは、最近のThinkPadでは標準となった6列タイプ。スペック的には、ストロークがX1より0.2mmほど浅いようだが、タイプしてみての違いはほとんど感じない。
薄型のUltrabookでは底打ち感の強いキーボードが多いのだが、X1 Carbonではそういった感覚がまったくない。どちらかといえば「ふかっ」とした、タイプ音の柔らかいタイプのキーである。打ち疲れしにくい、ThinkPadらしいキーボードだとは思う。過去のThinkPadには、これよりもいいタイプ感のものもあったとは思うが、現状のUltrabookでは、最上のものと考えて間違いはない。
タッチパッドの操作感は良好だ。ボタンの押し心地が軽めなのは筆者の好みと異なるが、使いにくいわけではない。そしてもちろん、ThinkPadには「トラックポイント」がある。その操作性はいまだ健在だ。「トラックポイントをまったく使ったことがない」という人にならともかく、そうでないなら「これこそが価値」と感じるだろう。
薄型化には代償もある。それが「インターフェース」だ。X1 Carbonではヒンジ構造が、背面へ倒れ込むような構造に変更された。薄型化にはプラスであるため、Ultrabookでは多く採用されるものだ。そのため背面からは、各種インターフェースが一掃された。電源コネクターも背面から左側面へ移動している。
これまでのThinkPadでは、伝統的にEthernet端子とアナログRGB出力端子が搭載されてきたが、X1 Carbonにはそれらがない。USB 3.0やMini DisplayPortによる拡張で対応することになる。Ultrabookではよくある仕様であり、ここをことさらあげつらうものではないと思うが、ちょっとThinkPadらしくない、とも感じる。
また、USB端子は左右に振り分けられた格好になっているが、左側がUSB 2.0で、右側がUSB 3.0とひとつずつしかない。「本格的な拡張はUSB 3.0対応のドックを」という発想なのだろう。オプションで用意されているドックを使えば、DVI出力、Ethernet・USB 3.0×3が使えることになるので、トータルではプラスである。
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