この横長ディスプレーをサポートするために用意されたのが、「東芝スプリットスクリーンユーティリティ」だ。その名のとおり、開いているウインドウ2つを、指定した比率の大きさに調整して並び替えるもので、ウインドウ上部にあるボタン([ロロ]型のボタン)をクリックするだけで、2つのウインドウの並べ替えができる。
「たったそれだけ?」というなかれ。これは確かに快適で、難しさもない。「シネスコ=映像」というイメージを離れた、パソコンならではの価値といえる。
他方で、画質や音質が悪いのかというと、そんなことはない。若干色は浅いが、ディスプレー品質は必要十分で、おおむね満足できるものだ。音質の方は必要十分を超え、このサイズでは他になかなかないほどの満足感が得られる。低音が豊かで広がりもあり、「パソコンが唯一のAV機器」という個人宅でも、それなりに満足できるだろう。
パワーは十分
バッテリー動作は優秀
R542はUltrabookであるため、プラットフォームも他のUltrabookとほぼ同様になっている。CPUはCore i5-3317U(1.70GHz)で、プラットフォームはコード名「Huron River」と呼ばれるIvy Bridge世代のものだ。グラフィックもCPU内蔵のIntel HD Graphics 4000が使われている。
Windowsエクスペリエンスインデックスは「5.9」。同じようなCPUスペックのUltrabookに比べると、ちょっと低い印象もある。だが、致命的な遅さを感じるシーンはなく、ディスプレー解像度の大きさにともなうスピード低下も見られない。
R542はストレージが、OSのファイルなどの一部の情報を入れる小容量のSSD(32GB)と、データ用のHDD(500GB)を両方使う「Intel Smart Response Technology」対応の構成になっている。ピュアモバイル的な用途でないと考えれば、この構成も理に適っている。
発熱については、かなりばらつきが大きい印象だ。パームレストなどはほとんど熱を持たないが、本体右上のヒンジ近くに熱源が集中しており、しかも、高負荷時には相当な熱さになる。底面の一部でもかなり感じられるので、高負荷になる際(例えばゲーム時)には、膝の上で使うのは快適ではあるまい。
他方で、驚くほど優秀なのがバッテリー駆動時間だ。カタログ値では最大8.0時間(JEITA1.0測定法による)だが、「BBench」でのベンチマークテストでは、最長6時間半程度から5時間40分程度。サイズの割には十分な駆動時間と思える。ACアダプターもコンパクトだ。「移動先でじっくりと腰をすえて」という使い方に向いている、というイメージは、このあたりからも伝わってくる。
BBenchによるバッテリー駆動時間テスト | |
---|---|
バランス設定 | eco設定 |
約5時間42分 | 約6時間23分 |
さて、まとめである。「変わり種の一発屋」に思えそうだが、R542は驚くほど「ストレートな球」だ。パソコンでさまざまな作業をするなら、この形態は確かに快適だ。他方で、これが従来のノートパソコンのプラットフォームで作られていて、分厚かったりバッテリーが持たなかったりしたら、バランスが悪くてあまり魅力的ではなかっただろう。
「Ultrabookと言えばモバイル」というイメージが強いだろうが、単に快適なノートパソコンを作る、という用途に向けてもいい。R542からは、そういう可能性もしっかりと感じられる。
- お勧めする人
- ・出先でもじっくり作業がしたい人
- ・マルチ画面にあこがれるけど果たせない人
dynabook R542/16FS の主な仕様 | |
---|---|
CPU | Core i5-3317U(1.70GHz) |
メモリー | 4GB |
グラフィックス | CPU内蔵 |
ディスプレー | 14.4型ワイド 1792×768ドット |
ストレージ | HDD 500GB+SSD 32GB |
無線通信機能 | IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0 |
インターフェース | USB 3.0×3、HDMI出力、10/100/1000BASE-T LANなど |
サイズ | 幅368.5×奥行き200×高さ20.8mm |
質量 | 約1.69kg |
バッテリー駆動時間 | 約8時間 |
OS | Windows 7 Home Premium SP1 64bit |
価格(予想実売価格) | オープンプライス(14万円前後) |
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「災害時ケータイ&ネット活用BOOK」(共著、朝日新聞出版)、「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(エンターブレイン)、「リアルタイムレポート デジタル教科書のゆくえ」(TAC出版)、「スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場」(アスキー・メディアワークス)。最新刊は「漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)。
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