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モノ作りを愛するMake:の仕掛け人、Dale Dougherty氏の夢

2012年06月14日 12時00分更新

文● 美和正臣 撮影●小林伸

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 国内でDale Dougherty(デール・ダハティ)氏の名前を知る人は少ない。だが氏がティム・オライリー氏と一緒にO’Reilly Media.Incを創設し、「Make」という雑誌を立ち上げた人物と言えばどうだろう。そして日本でも年々規模が大きくなっているDIYや電子工作をテーマにしたイベント「Make:」の創設者だと聞けば、ASCII.jpの読者なら俄然興味をそそられるに違いない。

 2日、日本科学未来館にて「Maker Conference Tokyo 2012」が開催され、Dale Dougherty氏が基調講演を行なったが、その前日に氏にインタビューする機会を得た。彼は何を思い「Make:」という雑誌を立ち上げ、Maker Faireというイベントを運営し始めたのか? 世界的な拡がりを見せる“Maker”の仕掛け人に、まずはそのあたりから聞いてみたい。

子供達にモノ作りの楽しさを!

――2005年に「Make:」を発刊して、Maker Faireも含めて影響力が広がってきましたが、最初に立ち上げたときは今のように盛り上がると考えていましたか?

ダハティ:今振り返ってみると、こう盛り上がるとは思いませんでした。そもそもMakeを発刊したきっかけは、もともと持っている自分の職業や技術・能力と関係なく、何かをハードウェアで楽しんでいる人たちが多いことに気付いたからです。たとえば、コーディングをやっていたとしても、ハードウェアを使って何かやってみたい、改善してみたいという人たちがいます。これを私は「これは面白い」と真剣に受け止めたわけです。彼らが作ったものは、動いたり光ったりするもので、見た目にも良い。これは雑誌にできるのではないか、という結構単純なレベルだったんです。

「Make:」は現在、子供向けのものも発売している。最新のものは3Dグラス対応のものだ

――現在アメリカではMaker Faireの参加人数はどれくらいなのでしょうか。

ダハティ:購読者はアメリカ市場だけで12万5000部くらいです。Maker Faireは世界60ヵ所で行なっており、最近カリフォルニアで行なったMaker Faireでは来場者は11万人くらいでした。参加人数も重要ですが、それよりも、考え方や発想が広まっていることのほうが重要だと考えています。哲学的なことを言うようですが、20世紀後半にあった「消費社会」という考えから「参加社会」に変わろうとしている中に、われわれが存在しているわけです。物を消費するだけでなく、「自分も何か作って参加しよう」とする発想になっている。このことに意味があるのではないでしょうか。

――振り返ってみると、Make:が発刊された2005年にはYouTubeがサービスインし、その後日本では2007年にニコニコ動画が始まりました。動画投稿サイトの登場によって、誰かが作ったものをみんなで楽しんで盛り上がるという文化ができたのですが、こうしたネットの発達はMaker Faireに参加する人の増加につながったと思いますか。

ダハティ:YouTubeで公開されていた動画で有名なのが、ダイエットコークにメントスを入れて中身が吹きだすというものでした。ちゃちだけれど見ていて楽しいものでした。重要なのは、この面白いものを多くの人たちと一緒に見るということだと思います。

 確かにYouTubeの登場で、私たちクリエイターがやっていることを見せられるし、作っているものを多くの人に伝えられるようになりました。けれど、Maker Faireのように集まった人たち皆が1つのコミュニティとなって、目の前で一緒に体験し、シェアすることがポイントであるような気がします。音楽でいえば、CDを買えば曲を聴くことはできますが、ライブに行って、皆が知ってる曲が流れた時に気持ちを共有するというのと同じです。

――CNNの「The Next List」という番組に出演 された時、中学生くらいの子どもたちにはんだ付けをさせたり、物を削って作ったりさせたりするという“物作り”運動をされていると語っていました。現在、この運動に注力されているわけですか?

ダハティ:はい、そうです。Makeを発刊した時はあくまでも大人が対象でしたが、Maker Faireが始まると家族向けになりました。でもよく観察していると、子どもたちも集まってとても楽しんでいるのだけれど、表情に寂しさを感じたのです。家に帰っても道具を使ったり遊びを続ける機会がありません。それに、なぜ学校ではこんなに楽しいことができないのだろうかと。

アメリカでも日本と同様に科学に関する授業はありますが、情報を伝えて終わりという教育内容が多い。あるいは、実験して同じ結果を得るために同じことの繰り返しをしているわけです。型にはまったやり方だと、科学に興味を持っているような子供は退屈してしまいます。だから、型にはまらないことをするチャンスを子どもに与えたいと思いました。暗記やテスト以外の教育制度の枠組みから外れたほうが楽しいでしょう(笑)。 子どもにオブジェを作るための知識を伝えるのではなく“Make”する行為を伝えるということです。

――日本の現状では秋葉原に電子部品を買いに来る客層は年齢層が高く、小中学生はまったくいない状況で高齢化が始まっています。こういった状況はアメリカでも同じなのでしょうか?

ダハティ:秋葉原は世界遺産というわけじゃないですけど日本にしかありません。アメリカには同じような地域はないので魅力的ですね。秋葉原みたいな町があったら毎日行ったはずです(笑)。アメリカでの年齢層の状況はわかりませんが、時代が時代ですから、部品などはオンラインショッピングで購入する人が多いでしょう。

 Makerたちの人口が増えれば秋葉原が活性化するかどうかは、なんとも言えないところですが、日本では家族単位で経営している工場が多いので、活性化を期待したいところです。工場で部品を作っている人たちがもっとWebにつながって交流を図れば、Makeも秋葉原も活性化するのではないかと思います。

――日本では職人がリスペクトされるという文化があり、これが日本を技術立国にした要因だと思いますが、今では若い世代からモノ作りをする職人になる人が少なくなっています。こうした現象は世界的なものとお考えでしょうか。

ダハティ:そうですね、世界的な現象だと思います。ただ、職人の時代が終わっているのではなく、もう1つの可能性が出てきた社会になっていると思いたいですね。

 消費者社会、消費生活者という言葉があります。何かを購入して消費して終わる、映画を見たりゲームをやったりして休暇を過ごす。このように人生の娯楽が受け身でいいのでしょうか。そこで、モノ作りをしている人たちが、非常に重要な教育を担うことになるのだと思います。

 Makeには“Technology on your time”、「自分の時間で自分の技術を」という副題があるのですが、大きな組織の中にいると自分の時間や能力を他の誰かが決めてしまいます。だから自分で決めて、自分が発揮したい能力、たとえば料理を作ったり庭の手入れをしたりということであっても、達成感があると思います。

 新しく出た技術はバッシングされることもありますが、技術の方向が「自分が参加できる」という方向に向かっている気がします。Facebookもそうですね。自分が参加して、自分らしさを演出する。人に還元するという時代になってくるのかなという期待をしています。お金だけでなく、モノ作りそのものが楽しいことだと思ってほしいですね。

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