テレビ局とアニメの活路はどこに
―― 枠に種類があるのですか。MBSの放映枠で、日曜日の5時台と深夜に分かれているのはなぜでしょうか?
丸山 原則、僕らが視聴者層を選ぶものではないと思っているんですけど、「日5」と呼んでいる枠は、放送されている時間が人の目に触れやすい。総合チャンネルとして老若男女いろんな人に観てもらえると期待してる作品を配置するんですね。そこでアニメにもっともっと興味を持ってもらったら、それが深夜アニメの視聴へにつながったりもするのかなと。熱いアニメファンにも、まだそこまでではないライトなアニメユーザーにも両方の受け皿になれれば最高です。
対して深夜の枠は、入り口としては狭く思われるかもしれません。1個1個の作品は、若い男性向けとか女性向けとか、実際見ている方の層はそれぞれセグメントされているかもしれない。でも枠の数が多いことによって、結果的に多くの視聴者層をカバーしているんですね。質が違う「狭い」ものの種類をたくさん並べる、それがMBS全体のアニメのバリエーションに繋がるんです。
―― 今の時代は、マスメディアといっても「マス」がどこにあるかわからない時代と言われますよね。高い視聴率は取りにくい。テレビ局としての活路、ビジョンのひとつはアニメが担っていると言えるでしょうか。
丸山 そうですね。担っているし、これからはMBSの局のことだけじゃなくて、テレビというもののあり方全体のことを考えなければと思います。
アニメーションの場合も、テレビ局全体で全体でバトンをつくっていくみたいな編成に、結果としてなっていたらいいなと思っているんです。たとえばうちの局では低年齢層向けのアニメ作品がない。でも他局で幼稚園児向けの作品が、別の他局で小学生歳向けが、そしたらMBSは中学向けというふうに、バトンを繋いでいくようなラインナップになっていたら、みんなテレビのアニメを見続けてくれると思うんですよ。
―― それは面白いですね。自局、他局の境界線を取り払ったところで考えるというのは。お話をうかがっていると、丸山さんのお仕事は、ヒット作品を作るということ以上に、「ヒットさせるための土壌を作る」というところにある気がしてきました。
丸山 たしかに、両方の顔があります。アニメ枠全体の編成人としての顔と、個別の作品を作る一プロデューサーの顔と。
(後編へつづく)
■著者経歴――渡辺由美子(わたなべ・ゆみこ)
1967年、愛知県生まれ。椙山女学園大学を卒業後、映画会社勤務を経てフリーライターに。アニメをフィールドにするカルチャー系ライターで、作品と受け手の関係に焦点を当てた記事を書く。日経ビジネスオンラインにて「アニメから見る時代の欲望」連載。著書に「ワタシの夫は理系クン」(NTT出版)ほか。
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