しなぎれ!
―― あの、会議室の壁一面「けいおん!」のポスターですが。
佐野 いいでしょう、これ。
―― 実はここにお伺いする前に、佐野さんの人となりはリサーチしてきました。最初は「けいおん!」の話も気軽にできる感じだったのに、最近は入れ込み度合いが激しくなって、迂闊なことは言えない雰囲気だとか。
佐野 いやいや、そんなことはないですよ。
―― しかし今、この会議室の机の上が「けいおん祭り」の様相ですが。
佐野 そうですね。アニメディアの付録※も持ってくればよかったですね。「けいおん!」特集をやっていて付録が可愛いんですよ。
※ アニメディア : 学研パブリッシングの情報誌。2011年10月号の付録はポストカード、12月号の付録はトラベルファイルとトラベルパスポートだった。
―― そういうのも揃えているんですか?
佐野 久しぶりに買いましたね。高校の頃はよく買っていたんですよ、アニメディアとかアニメージュとか。これが仕事になった時に、最近はどうなってるんだろうと、昔買っていた雑誌がまだ売られていたんでうれしくなっちゃって。
―― これが仕事になったのは、どんなことで?
佐野 まず「けいおん!」のアニメーションが始まった頃に、ちょっと変わった現象が起きたんですよ。お店でちっちゃなアンプがすごく売れて、品切れになっちゃったんですね。
―― どれくらいのアンプですか?
佐野 Pathfinder 10※とか、Valvetronixシリーズの15Wのもの(VOX Valvetronix)※であるとか、そういったものが軒並み売れて、なくなっていくんですね。
※ Pathfinder 10 : VOXアンプの外観的特徴をすべて備えたミニチュアVOX的モデル。
※ VOX Valvetronix : デジタルモデリング回路と真空管パワーアンプのハイブリッドモデル。現在はモデルチェンジにより15Wモデルはなくなり、20WのVT20+がシリーズ中最小出力機。
―― ジャズベースのレフトハンド仕様がバカ売れしていた頃ですよね。
佐野 1年分ぐらいの売上が上がったりね。社会現象として不思議だなと。やっぱり「けいおん!」の影響ってすごくあるという事がわかったんです。その時に皆で「けいおん!」をチェックし始めたんですが、これは面白いしハマるなあと。
―― どこにハマりましたか?
佐野 音楽的な内容はほとんどないんですよね。部室でお茶を飲んでいるだけ。バンド名も放課後ティータイムというくらいですから。でも、いわゆる「バンドあるあるネタ」というか、学園祭の前はこうだったとか、クラブやるときこうだったとか、他愛もない話に共感が持てたんです。
―― そうですね。最初の頃はもっと気合の入ったものかと思っていたので拍子抜けしましたけど。
佐野 ただ、これを見てバンドを始めるような女の人はいないだろう、と思っていたんです。でも、うちの中3の姪から電話があって「叔父さんコルグに勤めてるんだから、チューナー買ってきてよ」って。なんで? って聞いたら「けいおん!を見てギターがやりたくなった」って言うんです。
―― そんな身近な所にマーケットが。
佐野 それに「けいおん!」はディテールにすごくこだわっているでしょ。楽器もブランド名が出ていたり。うちの製品もTRITON Extremeが出てますし※。もともとキャラクターの名前の由来も、P-MODELなんかから来ているんですよね? その辺のところから、やっぱり好きな人が作っているんだなあと。
※ TRITON Extreme : 劇中で琴吹紬が演奏していたのは76鍵モデル。第1期のエンディング「Don't say "lazy"」に登場するショルダーキーボードはKORG RK-100。
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