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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第80回

開発陣に聞く第1世代Ultrabook dynabook R631の秘密

2011年11月18日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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薄くても端子を「削らない」設計
実現の鍵は?

R631のマザーボードを底面側から見た状態。ハニカム構造のリブが目立つ

 確かに他社のUltrabookと比較しても、R631は「削らない」仕様だ。他機種では外付けアダプターで対応している端子類も内蔵し、それでも最軽量クラスである(13型クラスとしては、というエクスキューズはつくが)。長尾氏の言うように、その構造はR731から引き継いだ部分が多いようだ。

平井「ボディーは『マグネシウム薄肉鋳造流し込み』で作っています。三面でボディーを支える構造です。R731の延長線上にある、発展された設計思想で、軽量化するために今回新しい技術を導入した、というわけではありません。

 薄さについては、レイアウトの工夫で実現しました。背面にポート類を配置して、見た目にもキレイにしています」

端子類は手前側にもってくるのが一番簡単です。しかしそれでは薄く見えない(古賀氏)

古賀「このようなレイアウトにした理由はいろいろあります。端子類は手前側にもってくるのが一番簡単です。しかしそれでは薄く見えない。薄型マシンとしてのこだわりがありますから、その構造は採れません。キーボードの部分に端子を持ってくると、キーボードそのものと干渉します。ですので、多くの機種は端子を手前に持ってくるわけです。それに、キーボードを後ろ側に配置した方が、格好良く見えるのです。

 キーボードとディスプレーパネルの間に端子を、という考え方もありますが、使い勝手を考えるとパームレストの部分は小さくできません。その結果、背面しか残っていなかった、と言ってもいいでしょう。

 そのため、ヒンジはかなり径の細いものになりました。径が細いので、どうしても多少グラグラします。ですが、勝手に倒れることがないよう、必要なトルクは維持しています。社内の(既存ノートと同じ)品質基準も満たしていますし、動作中・経年劣化での不都合はありません」

平井「この径ではトルクが出しづらい、というのが問題でした。軽く動くようにしながら、しかも保持のためのトルクをキープしています」

 この「ヒンジ問題」には、別の点も関わってくる。それは「通信」だ。他社のUltrabookはWiMAXを内蔵してないが、R631はWiMAX内蔵だ。Wi-Fi・WiMAXともに、アンテナは感度の面でプラスとなる「ディスプレー上部」に内蔵されている。すなわち、あの細い径のヒンジにはディスプレー関係だけではなく、アンテナ用のケーブルも通っている。ウェブカメラ用のものもだ。

平井「3G、WiMAX、カメラなど、最大4本までのケーブルをヒンジに通るように、0.1mm単位で設計しています。もちろん単に通るだけでなく、強度も保てるように設計しています」

古賀「東芝では、アンテナはすべて“上”ですね。アンテナ性能が悪い機種って、すぐにわかるんですよ。ライバル機種と比較しても、『最後までつながっているのは東芝のパソコン』でありたい、と思って開発しています。

 WiMAXについても、最初から『ニーズは絶対にある』と考えて搭載しています。“プラスα”という形での設計では、(追加のためには)余計な日数がかかります。開発の段階から規格取得を前提に動いているので、発売時点から搭載できるのです。実際問題、後付けでは内蔵できないんじゃないでしょうか。例えばメモリーのクロックも1.6GHzになり、通信と干渉しやすくなっています。(ノイズの)遮蔽で非常に苦労するんです。

 我々はモバイル機器について、『外でネットといかに簡単につなげるか』が重要と考えています。すでにLTEも内蔵できるだけのアンテナ設計は終えています。あとは国内の状況に合わせて、3GやLTEなどの製品を用意していくことになるかと思います」

高頭「ヨーロッパ市場では3Gのニーズが多いので、最初から3Gモジュールを内蔵して出荷しています」

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