議論を巻き起こした「論文」
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| 田中辰雄准教授の論文「ネット上の著作権保護強化は必要か ― アニメ動画配信を事例として」表紙 |
先日、「ネット上の著作権保護強化は必要か ― アニメ動画配信を事例として」という論文が、ネット上で話題を集めたのを覚えているだろうか?
YouTubeに権利者に無許諾でアップロードされたアニメ作品を、削除された場合と、そのまま残した場合で分類・追跡調査し、“残した場合のほうがDVDの売り上げが高いと推定される”とした論文だ。
経済産業省(当時は通商産業省)の一部局を前身とするRIETI(独立行政法人 経済産業研究所)から発表された論文ということもあり、「国が無許諾配信を推奨した!?」と解釈する人も出るなど、話題を呼んだ(もちろん誤解である)。
ニコニコアニメチャンネルなどを活用した、アニメのネット公式配信も増える中、無許諾配信をどう捉えるかは、アニメ視聴者のみならず、業界関係者も気になるところだろう。著者の田中辰雄准教授(慶應義塾大学 経済学部)に話を聞いた。
![]() | 田中准教授の論文「ネット上の著作権保護強化は必要か」は、2007年10月~2008年6月に放映開始された計111作品のテレビアニメを対象とした調査だ |
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誤解はどこから生まれたのか?
―― YouTube上のいわゆる違法アップロードファイル、つまり権利者に無許諾で配信されているアニメ本編動画は、DVD販売の売上に貢献している。したがって削除は適切ではないというメッセージが、経済産業省とも関係の濃い研究所から発表されたことで、注目を浴びましたね。海賊版の話題を扱うブログがセンセーショナルに扱ったことも、それに拍車をかけました。
田中辰雄准教授 「確かに、この研究に関わる費用(主に人件費)は、RIETIの助成を受けています。ただし、あくまで研究成果は個々の研究者に属するものであり、RIETIや経済産業省の見解ではないというポリシーの下での研究です。まあ、注目された、という意味では良かったとは思っていますが(笑)」
![]() | 論文概要ページの但し書きにも「ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、経済産業研究所としての見解を示すものではありません」とある |
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―― 論文自体は計量経済学という極めて専門性の高いものですから、おそらく、ネット上の反応の多くはその中身を精読してというものではなく、タイトルと発表元の名前から反応した、というものが多かったのでしょう。
田中 「わたしを『違法配信推進論者』と呼ぶ方もおられるのですが、1つ1つ実証に基づいて論じているというのはご理解いただきたいところです。コンテンツの権利者と、ユーザー双方の利益の最適点を探りたいという思いを持って研究に取り組んでいます」
―― この論文で先生が伝えたかったことはスバリ何でしょう?
田中 「YouTube上で流通するアニメ映像については、著作権の保護をこれ以上強めなくてもよい、あるいは弱めてもよいのではないか、ということですね。誤解されたくないのは、著作権の保護がまったく必要ないと主張するつもりはないという点です。
あとで詳しく述べますが、いわゆる『最適保護水準』という考え方に基づいた判断が必要だと考えており、現状は保護が厳しすぎて、かえってコンテンツの売上に負の影響を与えているのではないか、いうことです。
無許諾で配信されているコンテンツを戦略的に利用する立場を取ればよいだろうと考えています。販売に影響を与えないものであればむしろ放っておくべきです。あるいは公式に準じる扱いを与えることによって、宣伝効果を生むといった積極的な活用も可能かもしれません」
![]() | 列[5]のlog(DVD売上枚数)に注目してほしい。3行目のlog(YouTube再生数)の値が正(プラス)であり、正の相関関係があるというのが田中准教授の主張だ(論文中の表から抜粋) |
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