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コンプガチャ規制についての考察 ― 第2回

コンプガチャは怪しいビジネス手法なのだろうか? これを検討してみよう

ゲームに高額課金者が必要な理由

2012年06月21日 09時00分更新

文● 田中辰雄

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 市場規模3000億超・利益率40%超と言われるソーシャルゲーム業界を揺るがしたコンプガチャ騒動について、慶應大学経済学部 田中辰雄准教授からの寄稿を掲載する。

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(1)コンプガチャは射幸心をあおるギャンブルか

 コンプガチャは怪しいビジネス手法なのだろうか? これを検討してみよう。

 まず、コンプガチャは射幸心をあおるギャンブルであるという見解があるが、これは正しいだろうか。ギャンブルの定義もはっきりしないところがあるが、典型的なギャンブルは多くのものが金を出し、これを少数の勝者に配分する仕組みである(*1)。

 競馬でもカジノでもパチンコでも多くの人が掛け金を出し、ごく少数の勝者がその大半を入手し大きな富を得て、大多数の人は掛け金を失って終わる。勝者と敗者がざっくりと分かれ、多数の敗者から少数の勝者に富の移転が行なわれる。この富を目指して勝者たらんとして挑戦するのが射幸心であろう。

 しかし、コンプの場合、回しつづけると回数はかかってもコンプするので、ギャンブルで言う勝者と敗者に相当する人が出てこない。コンプを回した人の言動を見ると、「3回でそろった、ラッキー」「7回でそろった」「10回でなんとか」「15回で出ないのであきらめた」などの言動が並んでいる。

 ここで、あきらめたケースを除くと、最終的に目的の強レアを入手していることに注意しよう。その意味では多数の敗者は存在しない。強いて言えば結果として高額支払いになった人が敗者かもしれないが、それでも結局入手はしている。

 最終的にあきらめた人の場合でも、目的の強レアは入手していないが、通常のガチャで入手できる弱レアは大量に入手しているので、それをゲーム内通貨に換金すれば、かなりの額を回収できる。

 要するに、ギャンブルで典型的に見られる、「少数の勝者に富が集中しそのまわりにすべてを失った多数の敗者がうなだれている」というような構図が見られないのである。

 競馬やパチンコなどのギャンブルの場合、お金の投入量を増やせば勝てるわけではなく、ほとんどの人は掛け金を失って敗者となるが、コンプでは投入量を増やせばほとんどの人は目的である強レアカードを入手しておわる。これは通常のギャンブルとは状況が異なっている。

 コンプの本質は、ギャンブルというより強レアカードの高額販売である。強いレアカードは欲しがる人が多いので、高値で売れる。これを販売するのにコンプという形式をとっていると考えられる(*2)。

 ユーザはコンプまでにかかる金額が3~4万円くらいかかるかもしれないという情報は得ており、それを承知でコンプに挑戦する。運が良ければ1万円くらいだが、運が悪いと5万円を超える、価格に不確実性がある点で運の要素があり、この点をギャンブルと言えばギャンブルである。

 しかし、それは購入価格が不確実なだけで、射幸心を煽っているわけではない。射幸心とは少額の掛け金をかけ、少数の勝者になって多くの富を入手したいという気持ちであるが、コンプガチャの場合、多数の敗者の掛け金を奪って大きな富を得る少数の勝者というのはいない。強いて言えば勝者とは少ない回数で揃った人であるが、そうなっても購入価格が少なくて済んでラッキーというだけである。これを射幸心と呼ぶのは無理があるだろう。

 少なくとも、ガチャを回す人はそのよう一発当てたいという射幸心で回しているのではなく、単にレアカードが欲しくて高額を覚悟で回しているだけである。高値を出しても欲しいものがあり、ゆえに高値を出す、これを射幸心とは言わないだろう。

*1
より広い定義としては、取引に不確実性があればギャンブルだとされることもあるようである。しかし、そうだとすると預金を含むあらゆる資産運用がギャンブルであり、さらに就職先の決定も、結婚相手の選択もギャンブルとなる。このような定義はギャンブルの過剰定義であり、少なくとも、「ギャンブルは射幸心を煽るからいけない」というときのギャンブルとは、ここに述べたような狭い定義をとるべきであろう。

*2
なぜコンプという形式をとるのか、出現確率を下げて普通のガチャにすればよいではないか、あるいは3万円などの値札をつけてそのまま高値販売してもよいのではないか、などの意見があるかもしれない。そうではなくコンプ形式をとる理由はいろいろ考えられるが、説明をこれ以上長くしないためここでは省略する。

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