「Tegra 2の100倍」を実現する鍵は?
ではどうやって100倍の性能向上を実現するのか? これについてレイフィールド氏は、「(STARKで)性能が100倍程度まで向上するひとつの理由は、GPUによる処理性能向上にある」という。
現在のTegraでは、メディアアクセラレーションにGPUの機能が使われているが、今後のTegraシリーズ(どの時点になるのかは明かされなかった)では、GPGPUを利用して全体の性能を上げることになるようだ。例えば物理演算などは、GPGPU側で処理したほうが効率がいい。そうは言っても、現時点でのTegra搭載端末では、物理演算が必要とは言えないかもしれない。
しかし、Windows 8ではARM版が用意されることになっている。海外ではPCゲームユーザーもまだ多い。ソニーの次世代PSPこと「NGP」でも、Cortexプロセッサーが採用されている。任天堂の「Nitendo 3DS」もARMコアだ。そう考えると、ポータブルゲーム機やゲーム機能重視のスマートフォンや携帯メディアプレーヤー、あるいはARM版Windows 8での3Dゲームに使うといった用途は考えられる。そうしたデバイスでは、GPUを物理計算にも使うという可能性はありそうだ。
100倍の性能向上を実現できるもうひとつの理由は、「GPU以外にも特定目的のプロセッサーを統合する」ためであるという。モバイル向けの機能をハードウェアで実装していくことで、消費電力を押さえつつ、高度な機能を実現していくことが可能になるとレイフィールド氏は述べる。
現在のTegra 2では、2D/3Dのグラフィックスプロセッサー(純粋なGPU部分)に加えて、静止画を扱うイメージプロセッサーやオーディオプロセッサー、HDビデオエンコーダー/デコーダーなどの「プロセッサー」が内蔵されている。おそらくは、こうしたものの性能を上げつつ、さらにそれ以外のプロセッサーも追加していくのだろう。
性能向上のネックとなるメモリー対策は?
ただしGPUの性能向上には、ビデオメモリーの性能向上も必要となる。しかし現時点のモバイルデバイスでは、メインメモリーとビデオメモリーは共有されていて、メモリー周りの性能は高くない。
ARMのCortex-A9では、プロセッサー内部のコア間接続などに「AMBA 4.0」(Advanced Microcontroller Bus Architecture)を採用している。しかし、現時点のAMBAはバス幅が128bitであるため、プロセッサー~メモリー間には適当でも、GPU~メモリー間のバスとしては性能不足になる。
「Project DenverやCortex-A15のライセンス※2では、AMBAの改良も含まれるのか?」とレイフィールド氏に聞いてみたところ、「ライセンスや契約の詳細は話すことはできないが、メモリーとGPUの接続は、性能向上の大きなポイントである」との答えが返ってきた。
※2 NVIDIAはCortex-A15を独自に改良して利用するライセンスを取得している
AMBAはメモリーやキャッシュの一貫性を保ちながら、複数コアとメモリー(メモリーコントローラー)間を接続するためのバス規格である。これを改良して、GPUとCPUを密に接続することで、メインメモリーを共有したときの性能を向上させられるはずだ。
またモバイル機器ではCPUとGPUでメモリーを共有する構成であるが、Project Denverが想定するスーパーコンピューター的用途であれば、GPU側に専用メモリーを持たせることが一般的になる。そう考えると将来のTegraでは、AMBAを改良してより高いメモリーバンド幅を実現する可能性はあるかもしれない。
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