少女時代に月間40~50誌を読破
ただし、友達には絶対言えない
―― バックグラウンドをお聞きします。先ほどの「万人受けしないテキスト」の振り幅がものすごいですが、その知識はどこで付けたものですか?
安全ちゃん 主に雑誌だと思います。私は出身が群馬の田舎で、本当に何もないところだったんですよ。特に、中学生の頃は帰宅部だったので授業が終わったらヒマで、都会的な情報に飢えていたこともあって、近所の本屋さんに通い詰めていました。でも、お金がないからたまにしか買えなくて、ずっと立ち読みしているという相当迷惑な子供でもありました。
それで最初はティーン向けのファッション誌を読んでたんですけど、キャプションまでくまなく追ってもすぐ終わってしまうので、どんどん高年齢向けにシフトしていきました。コンサバなファッションばかりの「CanCam」を開いて「大人になったらこんな服着なきゃいけないんだ~」と思ったりしながら。実際は、大人になっても大丈夫でしたけど。
―― そこからいろいろなジャンルの雑誌に手を伸ばしていった感じですか。
安全ちゃん そうなんです。毎日1~2冊読んでいると、ファッション誌だけでは足りなくなるんですよね。なので、熱帯魚系の雑誌やDTP系の雑誌とか、「ラジオライフ」なんかも読むようになりました。だいたい月間で40~50冊くらい。とにかく何か読まないと落ち着かない! という状態でしたね。
熱帯魚もDTPもそれ自体には興味がないんですけど、たとえば熱帯魚の雑誌だったら、循環系の装置とか魚の病気を治す薬品とかを熱く語ってるのがすごく面白かったんですよ。自分はやらないんだけど、他人事的にそのジャンルの世界を覗くのが楽しくて読んでいるというのも多かったです。「DTPソフトなんて使わないのにショートカットキーにはものすごく詳しい」みたいなことになってました。
―― 濃い中学生ですね(笑)。それだけ知識が蓄えられると、クラスで話が合う友達はレアですよね。
安全ちゃん えーと、そこは隠すことに専念していました。やっぱり田舎の中学だからオブセッション(固定観念)が強いんですよ。学校の雰囲気としては、「個性派的なモノにハマりたい気持ちもあるけど、そういうのって“変わってる私”気取りで格好悪い。 あえて普通の女の子っぽくやるのが利口だよね!」みたいな空気がすごく強かったんです。ルーズソックスを履いた“いわゆる女子高生”的なもの以外は絶対に受け入れられない。
だから、本屋さんもあえて家から遠いところに行っていましたし、友達が家に遊びに来るときも自分の本棚がある部屋は「お父さんが仕事で使ってる書斎だから入っちゃダメ!」とか言っていました。
―― そこまで徹底した雰囲気だと、かなり我慢を強いられていた感じですね。
安全ちゃん 楽しかったですけどね、やっぱり辛さもあったと思います。相手に自分を合わせる感じでコミュニケーションしていたので、嘘ではないんですけど、人に秘密にしなきゃいけないことが多い、というストレスはありましたね。読んでいる雑誌の話とかも、ティーン向けファッション誌の1~2冊しか表に出せなくて、後は本当にひた隠しに隠していましたから。田舎だけに、ちょっとでも噂が出ると一気に広がりますし。
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