デノン本社試聴室で、中核機種「AVR-4311」を聴く
AirPlayで広がる、AVアンプの可能性 (3/3)
2011年01月08日 09時00分更新
Hi-Fiの先にある、パッションを伝える
最後に取材を実施したデノンの試聴室について紹介しておこう。神奈川県・川崎市にある音作りのための試聴室で、開発中の製品が世に出る前に通る最後の関門となる場所だという。
全体に残響の少ないデッドな音場で、厳密なテストに適した試聴室と言えそうだ。製品の音を決める際には、開発者がここに籠り、音を作り込んでいく。
説明では、床や壁など試聴室自体も、リスニングを繰り返しながら詰めてきたものだという。壁面はフロント部が90cm、側面が60cm浮いた状態で設置されており、音の反射・吸音の調整が可能。また、試聴時に敷き詰められていたフロアマットの取り外しによる調整なども実施されている。
試聴室にはデノン コンシューマーマーケティングが取り扱っているDALIのスピーカーなども並んでいたが、標準的という理由でテストにはB&Wのスピーカーが主に使われている。フロント2chがダイヤモンドツィーターに38cmのシングルウーファーを採用した801D、センターおよびサラウンドはそのひとつ前の世代となる801。サラウンドバックとしてATCのSCM20も併用している。サブウーファーはM&KのMX-5000II THXとのこと。
今回これらのシステムを利用して、BDディスクの視聴なども行った。D&Mホールディングスで、デノン・ブランドのサウンドマネージャーを担当する米田氏は、同社の目指す音作りの姿勢は「コンテンツを作った人々がこめたパッションを再生環境の中で再現できるかに尽きる」と断言した。
「平たい言い方でHi-Fiとか忠実再生と言うが、それは当たり前。その中でどれだけ、彼らの意志を伝えるかが重要。コンサートホールの床の広さ、ステージの大きさ、音の伝播、音響エネルギーをリスナーに伝えること。それはサラウンドでもステレオでも変わらない」(米田氏)
一連のディスクの中で最も印象に残ったのが映画「PAN'S LABYRINTH」の音響。サラウンド再生と言うと、スケールの大きなスペクタクル的なものを思い浮かべてしまいがちだが、この作品では第二次大戦下、厳しい現実から逃れ架空の世界に入り込む少女の内面が壮大な視覚技術とともに表現されている。
映像はもちろん素晴らしいのだが、それを支えるのが音響の演出だ。デモでは妖精の羽音によって奥行きある空間が表現され、目の前にある映像の世界がまるで現実であるような錯覚をもたらす。AVR-4311はつながりよくその空間を表現し、自然で在りながらリアリティーを持ってその情景を再現した。
デノンはAVアンプをほぼ毎年モデルチェンジしているが、AVR-4311はフルモデルチェンジのタイミングで刷新された機種で、アナログ回路を新設計。トランスをミッドシップに配置し、LR独立の構造を取るなど様々な改善が加えられているという。
上で述べたAirPlayに象徴される利便性の高さはもちろんだが、多機能は確固とした音質へのこだわりがなければその価値を十分に発揮できない。この面でもAVR-4311は充実した作りで、安心して使える1台に仕上がっていると感じた。
3DシアターやAirPlayが体験できる、デノン試聴イベント
今回紹介した「AVR-4311」に、「DBP-1611UD」、DALI「IKON」シリーズ、ビクター製3Dプロジェクターなどを組みわせた3Dシアター/ネットワークオーディオ関連の試聴会が、1月22日(土)と23日(日)の2日間、東京・恵比寿リスニングルームで開催されます。AirPlayのデモも実施されるとのことですので、ご興味のある人は足を運んでみてはいかがでしょうか。予約制となりますので、早めの登録をお勧めします。詳細は下記イベント告知ページを参照ください。
(1月13日追記)
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