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ゼロからはじめる最新サーバー選び -基礎編- 第7回

導入後も手間がかかることを忘れずに!

サーバー選びの最終ポイントは保守サポート

2011年01月06日 09時00分更新

文● 伊藤玄蕃

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ハードウェア故障への対応、休日夜間の対応

 保守契約をベンダー側(保守業者)の側から見てみよう。ユーザーと保守契約を締結すると、ベンダー側には「契約した時間(標準では平日の9時-17時)に呼び出されたら、即座に保守員を派遣しなければならない」「その保守員は障害の原因切り分けと復旧作業を行なうスキルを持っていなければならない」「サーバーのハードウェアが故障したのであれば、その代替部品を供給しなければならない」といった義務が生じる。

 そこで、保守契約を締結したサーバーの数量や使用年数などから障害発生の頻度を予測し、それに見合った保守員を確保する。また、サーバー本体やその基本コンポーネントが製造停止になると、その時点で保守契約を締結している同一機種の台数から、それに見合った交換用部品を確保して在庫しておく。これらの原資は、すべて、保守契約しているユーザーが毎月支払ってくれる料金である。

 そのため、保守サービスの作業は保守契約を締結したユーザーが優先され、契約をしていないスポット保守は後回しになる。特に交換用部品については、在庫残が少なくなるにつれ、「スポット保守のユーザーには、いくらお金を積まれても出せません。これは保守契約を締結しているユーザーに対する義務を果たすためのものなので。」という話になっていく。

 サーバーのハードウェア故障は、実際にはサーバーを構成する個々のコンポーネント(部品)の物理的な故障であり、その復旧作業はほとんどの場合、故障した部品の交換であるから、「交換用部品を出せない」というのは「ハードウェア保守ができない」と同じ意味になる。産業用サーバーの保守契約が最長で10年~12年まで延長可能なのは、10年~12年後まで交換用部品をベンダーが責任もって確保しておきます、ということなのである。

 契約時間外の保守作業にも、同様な対応が行なわれる。前述の通り、標準的な契約内容では、平日の9時~17時の間だけが保守対応時間だ。仮に夜間にサービスマンを呼び出さざるを得なくなった場合には、やはり割高な「スポット保守料金」を支払う必要がある。また、保守員も保守契約の締結数に応じて配置されるため、ふつう土日祝日や夜間の人員は手薄である。たとえば日曜日に落雷があり多数のサーバーが過電流で故障したとしよう。休日も含めた保守契約を締結し、割増の固定料金を毎月払っているユーザーが最優先され、保守員はそれだけで手一杯になるだろう。そうなると、スポットで呼び出そうにも保守員が出払ってしまって、月曜日の昼間までまったく対応してもらえないケースもあり得る。

 なお、土日営業の会社がサーバーを購入して保守契約を締結する際に、保守対応日をユーザーの指定曜日に変更してくれるベンダーや保守会社もある。たとえば、通常は月曜から金曜まで保守対応のところを、木曜日から月曜日を対象とし、火曜日と水曜日を対象外とするわけだ。このようなメニューのないベンダーや保守会社を選択すると、導入初年度からオプションで土・日曜日の追加有償保守契約が必要になり、コストが高くなってしまう。

 さらに、特に絶対に止められない業務(俗に「ミッションクリティカルな業務」という)を動かすサーバーでは、短時間の復旧が保証される保守メニューが必要になる。このケースでも、故障を連絡してから4時間以内の訪問や6時間以内の修復を保証するベンダーや保守会社がある。このサポートメニューは営業拠点からの距離が影響するため、適用地域は限定されることが多い。以下は日本HPの保守サービスのメニュー例である(表1)。

表1 日本HPのサーバー保守サービスの対応時間のメニュー(同社のWebサイトより)

予防保守、リモート監視/通報

 近年、特にミッションクリティカルな業務システムでは、実際に障害が発生してから復旧までの活動を「障害復旧(リアクティブ)サービス」だけでなく、障害が発生する予兆を捉えて対処する「予防保守(プロアクティブ)サービス」も重視されるようになった。これは、ハードウェア的なセンサーやソフトウェア的なログ監視などにより、たとえばHDDのI/Oエラー回数が増加したとか、サーバー内部の温度が上がってきているなどの事象を捉えて、ディスクを予防交換するとか、サーバー内部やファンの埃を除去するなどの予防策を講じることで、システムダウンを防止するという活動である。

 予防保守を保守契約に加える場合には、ベンダー側の保守担当者にタイムリーに予兆が通報される仕組みの構築に、リモート監視やリモート通報サービスを併用することが多い。リモート監視サービスは、第4回で紹介した「サーバーならではの管理機構」を利用して、ユーザー企業に設置したサーバーをベンダーの保守センターからリアルタイムで遠隔監視/操作する。

 一方、リモート通報サービスは、リアルタイムで監視するのではなく、メールや携帯電話のショートメールを用いて、障害の予兆をベンダーの保守担当者に通報する。リモート監視やリモート通報サービスは、予兆の通報だけでなく、突然の障害発生時にも、事態の迅速な把握などに有用な手段である(図1)。

図1 NECのリモート監視サービス「Express通報サービス」の概要

 予防保守やリモート監視/通報も、実際に利用するには特別なハードウェアなどの仕組みが必要なので、サーバーの導入計画の段階から運用段階を想定した準備が必要である。

賢いサポートの受け方

 サーバーも機械なので、「永久に壊れない」ことはあり得ない。また、訪問時間を保証した保守契約を締結していても、障害発生から復旧まで数時間はかかってしまう。特にサーバーが大型化し内部の部品が多くなると、個々のパーツが壊れる可能性は大きくなる。そこで1つの部品が壊れてもシステム全体としては稼動し続ける、冗長構成を取っておいたほうがよい。この考え方の延長線上には、「保守契約は最低限のものにして、スペアのパーツやスペアのサーバーそのものを自社で用意しておく」という体制もあり得る。

 実際に保守費用の見積りを取ってみるとわかるのだが、365日24時間で4時間以内対応の保守を3年続けると、全期間の支払総額は膨大で、同じサーバーをもう2台や3台買えるような金額になってしまう。サーバーの販売価格は低下しているのだが、人件費の割合の高い保守費用はそれほど下がっていないためだ。この点に注意して、ランニングコストの適正化をはかるようにしたい。

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