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ゼロからはじめる最新サーバー選び -基礎編- 第7回

導入後も手間がかかることを忘れずに!

サーバー選びの最終ポイントは保守サポート

2011年01月06日 09時00分更新

文● 伊藤玄蕃

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サーバーは、導入したあとの運用支援や障害対応などの保守サポートが重要である。今回は、保守サポートに関し、サーバ導入の計画段階から考えておくべき事項を説明する。

個人向けPCとは大きく異なるサポート

 サーバーは、クライアントPCよりも手間がかかるコンピュータである。導入直後の初期設定もそうだし、導入後の運用・保守作業でもそうだ。ハードウェアの価格性能比が向上したことにより、TCO(Total Cost Ownership:総保有コスト)に占めるハードウェアコストは年々低下し、サポートコストが年々増えている。それではまず、サーバーのサポートについて見ていこう。

設置や設定のサポート

 まず、サーバーの設置、OSの導入、初期設定は誰がやるのか考えよう。クライアントPCであれば、OSやオフィススイートのプレインストールモデルを購入し、企業のシステム部門が必要なカスタマイズを施してエンドユーザーに渡す方法が多い。また、オフィススイート以外にも企業の業務で必要な共通ソフトがある場合には、システム部門がまず1台のPCをカスタマイズして、PCベンダーがそれを必要台数だけ複製してエンドユーザーに渡すという方法もある。

 サーバーの場合は、基本的に設定作業をベンダーのエンジニアが行ない、企業のシステム部門はカスタマイズの仕様書を提示するだけであるのが普通だ。サーバーでもOSプレインストールモデルが販売されてはいるが、購入した状態でそのまま使うというのはきわめて稀である。通常は、CPUやメモリ、HDDなどの基本コンポーネントの追加作業、それから磁気テープ装置の組み付け・デバイスドライバの導入・動作確認といった周辺機器の増設作業、およびOSのチューニングやカスタマイズ作業が必要だ。

 クライアントPCと比べて、サーバーの部品は高価で設定などに関する情報もそれほど公開されていない。こうしたことから、ハードウェアのセットアップはベンダーや代理店の専門の訓練を受けたSEに任せるのがセオリーであり、業界の常識となっている。サーバーの構成やユーザー数にもよるが、おおむね数万円~20万円程度のコストが発生する。メインフレームなどハイエンドクラスのサーバーであれば、百万円単位の費用がかかることもある。

 OSやアプリケーションソフト、データベースソフトの設定やチューニングも、通常の企業のシステム部門ではお手上げになることが多い。もっとも単純なファイルとプリンタの共有だけが目的でも、サーバーのネットワーク設定、ユーザー登録、共有ファイル・プリンタの設定といった作業に半日から1日は要する。商用のアプリケーションやデータベースであれば、そもそもユーザーはどういった設定項目があるのかわからない状態なので、ベンダーに任せるしかない。

 こちらの費用は、サーバーの規模と導入するソフトに応じて決まるが、OSやバックアップソフトだけの設定で済むファイル&プリントサーバーでも数万円~20万円程度は請求される。商用データベースサーバーであれば、数十万円~百万円超というケースも珍しくない。導入計画の段階で、こうした点までサーバー取得費用(初期費用)に織り込んでおかないと、後で予算を超える請求に苦しむことになる。よくよく注意しておこう。

運用や保守のサポート

 サーバーはクライアントPCよりも管理がたいへんだ。上で述べた導入時もそうだが、導入後の運用フェーズのほうがさらに顕著である。

 全社規模で利用するアプリケーションサーバーやデータベースサーバーが停止したらどうなるか。業務に与える影響を考えると、計画外の停止は可能な限り防止しなければならない。そこで、導入計画の段階で、故障させないための定期点検や消耗部品の予防交換プログラムが必要かどうか検討し、その実施をベンダーに頼むのか、自社要員で対応するのか(対応可能なのか)まで考えておく。

 同様に、計画外の停止、すなわち障害などの不測の事態が生じた場合の対応方法も検討し、そのために必要なベンダーの支援も考えておく。

 多くのベンダーや保守業者は、定期点検・消耗部品の予防交換プログラム・障害発生のリモート通報/検知・障害時のオンサイト保守といったサポートメニューを用意しているので、ユーザーは自社に必要なメニューを選択して、保守契約を締結する。その費用は、毎年の経費(ランニングコスト)の予算に反映させておく必要がある。

保守サービスの必要性と体系

 サポートコストのうち、設置や設定にかかる費用はサーバーの導入や設定変更の際だけに生じる一時的/瞬間的もので、「一時費用」に分類される。運用や保守にかかる費用は、サーバーを使い続けている間ずっと生じる継続的なもので、「ランニングコスト」に分類される。TCOのうち、このランニングコストがもっとも大きな部分を占める。そのため、景気が低迷し経費削減が叫ばれる中で、保守サービスのコスト削減が企業のシステム部門の大きな課題となっているが、これが簡単ではない。

 まず、保守サービスを減らせば、故障の発生率が上がってしまう危険がある。さらに、故障からの回復時間が長引いて、システムの稼働率が下がる可能性もあるからである。逆の見方をすれば、システムの稼働率を高く保つためには、保守サービスは不可欠なのである

 そこで、サーバーを販売すると同時に、ベンダーあるいは代理店は、必ずユーザーに対して保守契約の締結を勧めてくる。保守契約の標準的なサービスは、「年1回ないし2回の定期点検+障害発生時には平日の9時-17時であればサーバーの設置場所まで保守員が出向いて原因究明と復旧作業を行なう(オンサイト保守)」といった内容で、おおむね月額固定料金制となっている(交換するパーツ代は別途徴収)。平日の9時-17時の間であれば、保守員を何回呼びつけても同じ費用しかかからないが、1回も呼ばなくても費用は発生する。

 一方、保守契約をしない状態で問題が生じた場合は、「スポット保守」を利用する事になる。これは、障害対応の都度、保守員の交通費や作業内容に応じた料金を支払うというものだ。スポット保守の1回分の費用は、おおむね、保守契約をした場合の月額料金の数カ月分に匹敵する。

 サーバーに限らず機械製品は、使い続けていると徐々に故障しやすくなっていく。そこでユーザーは「機械が新しい間はスポット保守で、ある程度古くなったら保守契約に切り替えれば、ランニングコストが下がるのではないか?」と考える。しかし、それでは保守業者のほうが儲からないので、

  1. 保守契約はサーバー購入時にしか締結できない
  2. サーバーの使用年数に応じて保守料金が増えていく
  3. 一定の使用年数を超えたサーバーは保守契約を打ち切る

という仕組みになっている。具体的には、サーバーの購入と同時に締結する保守契約の期間は4年~6年程度で、その間は固定料金となっている。当初の契約期間が完了すると、保守契約は1年ごとの締結となり、年々料金が上がっていく。そして、製造後6年から8年程度で保守契約の延長ができなくなるのが普通だ。第3回で紹介した産業用サーバーのように、保守契約を最長で10年~12年まで延長できる機種もあるが、これは例外的な存在だ。

(次ページ、ハードウェア故障への対応、休日夜間の対応)


 

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