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ゼロからはじめる最新サーバー選び -基礎編- 第4回

サーバーならではのCPUやメモリ、HDDなどのスペックを見てみよう

サーバーを特徴付けるハードウェアのいろいろ

2010年11月25日 09時00分更新

文● 伊藤玄蕃

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サーバーの主流となったx86サーバーはベンダー間の競争が激しく、製品スペックの変化も著しい。今回は、x86サーバーのカタログを読み解くために必要な、最新のハードウェア情報を身につけよう。

サーバーの構成要素

 x86サーバーのハードウェア面での構成要素(コンポーネント)の分類は、その前身であるIBM PC/ATからそれほど変わっていない。PC/ATの時代から、主要なコンポーネントは

  1. 中央処理装置(CPU)
  2. 主記憶装置(メモリ)
  3. 外部記憶装置(ストレージ)
  4. 拡張バス(外部インターフェイス)

 である。また、PC/ATより後に追加されたコンポーネントは、ネットワークと管理機構(マネジメントコントローラーあるいはサービスプロセッサー)くらいで、これも以前は拡張バスにオプションとして装着していたものが、工場出荷時から標準で組み込まれるようになったコンポーネントである。

 それでは、これらのコンポーネントごとに、最新の技術動向を説明しよう。

動作周波数アップからコア数増加に移ったCPU

 連載の第2回でも説明したが、CPUは動作クロックが早いほど性能が高い。したがって、数年前までは「最新のCPU=動作周波数が高いCPU」だった。しかし、周波数を上げるにつれて

  1. 消費電力が増え発熱が大きくなる
  2. CPUの内部設計の難易度が増す
  3. 周辺回路とのタイミングを合わせるのが困難になる

といった問題が生じ、2004年11月に発表されたPentium 4の3.80GHzを最後に、動作周波数は上がらなくなってしまった。

 動作周波数に代わる性能向上の手段は、マルチプロセッサー/マルチコア化である。複数のCPUで多数の処理を並列に実行し、サーバー全体の処理能力(スループット)を高めようというわけだ。当初は1台のサーバーに複数のCPUを搭載する「マルチプロセッサー化」が進められたが、すぐに1つのCPUパッケージ(ダイ)に複数のプロセッサーコアを搭載する「マルチコア化」が主流になった。

 マルチコアはマルチプロセッサーに比べて、マザーボードの設計が簡単・マザーボードを大きくしないで済む、といったメリットがある。マルチコアCPUでは、1コアあたりのクロックを抑えることで消費電力を抑えている。CPUコアが4つ搭載されるCPUは「クアッドコア」、2つ搭載されるCPUは「デュアルコア」と呼ばれる。現在では、インテルは最大8コア、AMDは最大12コアのCPUを発売している(写真1・2)。

写真1 インテルの8コアCPU「Xeon 7500番台」

写真2 AMDの12コアCPU「Opteron 6100シリーズ」

 マルチコア化と並んで重要なのは、やはり64ビット化だろう。従来の32ビットCPUに比べて64ビットCPUには、利用可能なメモリ空間が64GBから16エクサバイト(1600万TB)へと巨大になり、一度に処理できるデータ量が増えるといった利点がある。そのため、データベースサーバーなど大容量のデータを高速に扱う用途、大量のメモリを必要とするサーバー仮想化などでメリットが生じる。

 主記憶装置(メモリ)とCPUの間の通信方式も、マルチプロセッサー・マルチコア化に伴って変化している。従来のFSB(Front Side Bus)方式では、CPUとは独立したチップセットに搭載されたメモリコントローラを介して、CPUとメモリがパラレル通信を行なっていた。

 これに対して、2003年4月にAMDが発表したOpteronシリーズではCPUにメモリコントローラを内蔵し、CPUとメモリとの間をポイント・ツー・ポイントで直結する「HT(HyperTransport)方式」を採用した。インテルも同様のメモリアクセス方式をXeonシリーズに採用し、「QPI(QuickPath Interconnect)方式」と呼んでいる。これにより、CPUとメモリ間のデータ転送を高速化し、処理性能の向上を図っている。

高速化の進むメモリ技術

 メモリは容量が大きく、データ転送速度が速いほど性能が高い。データ転送速度は、動作クロック数×クロック信号1周期でやり取りできるデータの数で決まる。メモリの規格は、CPUの高速化に合わせて以下の順に進化してきた。

SDRAM (Synchronous DRAM)
 クロック信号1周期で1回のデータのやり取りを行なう方式で、おおむね Pentium 3 までのCPUで用いられてきた。現在のサーバーでは、ほとんど利用されない。
DDR SDRAM (Double Data Rate SDRAM)
 「DDR」とは「Double Data Rate」の略で、クロック信号の立ち上がり時と立ち下がり時の両方を利用することで、クロック周波数のSDRAMに比べて2倍のデータ転送速度になる。
DDR2 SDRAM (Double Data Rate 2 SDRAM)
 メモリ内部のデータ読み書きを並列化することで、DDRに比べてデータ転送速度を2倍に向上させたのがDDR2 SDRAMである。動作電圧をDDRの2.5Vから1.8Vに下げたことで消費電力も小さくなっている。現在、クライアントPCでは主流のメモリである。
DDR3 SDRAM (Double Data Rate 3 SDRAM)
 さらにメモリ内部の動作の並列度を高めることで、データ転送速度をDDR2の2倍に向上させたのがDDR3 SDRAMである。動作電圧も1.5Vに下がったため、消費電力も小さくなった。現在、x86サーバーでは主流のメモリである。

 表1は、これらのメモリの性能比較である。

表1 メモリの種類別の性能 (一部)
種類メモリの周波数データ周波数(倍率)データ転送速度メモリ規格名
SDRAM100MHz100MHz等倍0.8GB/秒PC100
133MHz133MHz1.066GB/秒PC133
DDR100MHz200MHz2倍1.6GB/秒DDR200(PC1600)
200MHz400MHz3.2GB/秒DDR400(PC3200)
DDR2100MHz400MHz4倍3.2GB/秒DDR2-400(PC2-3200)
200MHz800MHz6.4GB/秒DDR2-800(PC2-6400)
DDR3100MHz800MHz8倍6.4GB/秒DDR3-800(PC3-6400)
200MHz1600MHz12.8GB/秒DDR3-1600(PC3-12800)

 また、クライアントPCとは異なり、サーバーにはエラー訂正機構付きメモリが利用され、ビット化けによるデータエラーを起こしにくくしている。従来は、データにパリティデータを付加することで、データのエラーを検出して自動修復するECC(エラー自動訂正)機構が主流である。

写真3 サーバーで標準的に使われるECC付きメモリ(バッファローのECC付きDDR3メモリ「D3E1333-2G」)

 また最近では、メモリチップが機械的に故障してもデータを自動修復できるようにパリティデータを全メモリチップに分散配置するSDDC(Single Device Data Correction)機構を採用したり、メモリを二重化して高い耐障害性を持たせるメモリミラーリングを採用するサーバーも出てきた。

(次ページ、「多様化の進むストレージ」に続く)


 

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