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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 ― 第11回

ビデオ・有料配信・ライブ型消費

変わるアニメ業界──「面白ければ売れる」なら簡単

2010年09月06日 09時00分更新

文● まつもとあつし

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前回はヤフー!のGoogle検索エンジン採用のニュースを受け、ネットメディア全般の動向を俯瞰したが、今回からしばらくは映像コンテンツとメディアを「アニメ」を題材に考えていきたいと思う。

ジャパニメーションはコンテンツの優良児?

 「クールジャパン」「ジャパニメーション」という言葉を耳にするようになって久しい。海外の動画配信サイトでは、違法・合法を問わず数多くのアニメが投稿され、視聴されている。YouTubeでは日本人よりも、海外ユーザーのほうが活発にコメントでやりとりをしている光景に出くわすこともある。

 アニメーションはコンテンツの優良児とされ、その海外展開は国から支援を受けるなど政策とも連動している。(賛否両論あったが)文化庁が設立を計画していた国立メディア芸術総合センター「アニメの殿堂」も記憶に新しい。現在では予算執行が停止しているものの、当時は海外旅行者の利用も見込んでいた。

 言語や文化的背景など、コンテンツの輸出にはさまざまな障壁がある。そんな中、アニメは「輸出」が期待できる優良産業のひとつに数えられてきたわけだ。


海外市場の落ち込みが顕著

 ここで日本動画協会(アニメ関連企業の業界団体・一般社団法人)が公開している調査資料をみてみよう。

 「日本のアニメ業界・アニメ市場の近年の動向」と題された2009年の資料では、アニメ視聴(ライセンス販売)の全世界への拡がりを謳っているが、注目したいのはそのなかの「海外販売売上推移」だ。

日本動画協会「日本のアニメの海外展開」より抜粋

 この数字は、国内の制作タイトル数の動向とも連動しており、新作タイトルが減ったから海外売上が減少したとも考えられるが、いずれにしても2006年をピークに落ち込みが激しい。喧伝されるクールジャパンといったキャッチコピーや、動画投稿サイトにおけるファンの熱狂ぶりとは異なる姿が垣間見える。

 同時に国内のアニメ業界からは、いわゆるフル3Dアニメの影響を懸念する声も聞こえてくる。手書きの原画を元に動画のテクニックを駆使して、動きだけでなくキャラクターの心情まで豊かに表現する、いわば職人技を伝承してきた日本アニメ。しかし海外では、3DCGだけで制作されたアニメ作品が大半を占めている。

 そういった作品に親しんだ世代が大きくなったときに、日本の伝統的なアニメーションが果たして今のような支持を得られるのだろうか、というわけだ。


しかし、アニメを作るにはお金がかかる

 PixerやDreamWorksが手がけるような大型劇場作品は別として、テレビ向けの作品であれば一度キャラクターや舞台を3Dで作ってしまえば、繰り返しそれを利用することで制作費を大幅に抑えることができる。

 一方で多くのスタッフが関わる日本のアニメ制作には、多大なお金が掛かる。作品によってばらつきがあるが、一説によると1話(約25分)あたり1000万円から2000万円の制作費が必要ともいう。これを毎週1回、1クール(3ヵ月間:12~13週)続ければ、約2億円。

 これだけの費用を1社で捻出するのはなかなか困難だ。そこで編み出されたのが「製作委員会方式」である。アニメ作品をさまざまな形で商品化してビジネスを展開したいと考える複数の企業が、出資金を出し合い、制作費を捻出する方法だ。

公正取引員会「アニメーション産業に関する実態調査報告書」(2009)より

 この方式はアニメだけでなく、実写映画でも古くから採用されている。書籍や音楽よりも制作費が巨額になる映像コンテンツならではの方法とも言えるだろう。

 アニメバブルと言われた2005年前後では、アニメ製作を有望な「投資」と捉え、大手銀行や証券会社がこの方式に参加することもあったくらいだ。

 ところが、海外での売上げだけでなく、国内のビデオグラム販売状況もここ数年減少傾向に歯止めが掛からなくなり、筆者の周りでも「製作委員会のメンバー(出資者)がなかなか集まらない」という声を聞くようになった。

 「けいおん!!」などの一部作品の大ヒットが目立つ一方で、そもそも“どうやってお金を集めて作品を作るのか”に関係者は頭を悩ませているのが実情だ。その結果、2006年には年間306本あった新作は、現在では半分程度になっている。

 売れないからお金が集まらない、お金が集まらないから本数を作ることができないという悪循環に陥っているようにも見える。

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