WindowsMobile、Androidについて
―― 最近、たとえば携帯電話の領域ではWindows(Mobile)の存在感がやや薄れていますが……。
夏野 Windowsは確かに採用するごとにライセンス料が発生します。ただ、携帯電話と異なり、テレビはよりパソコンに近い使われ方になる。ということは、「周辺機器」が重要な要素になってくるんです。
テレビと周辺機器を組み合わせて、様々なシーンで活用する……といったようなニーズを考えると、Windowsを採用した方が有利かなという意見も根強くあります。メーカーはみんな悩んでますよ。
―― 確かに以前取材したROBROではマウス・キーボードに加えて、ハードディスクの増設が容易なのも魅力でした。
夏野 先ほどご紹介したように、どんどん安価になっていくハードディスクを気軽に追加できる訳です。でも、Androidは今のところ周辺機器対応は進んでいません。今後、Androidがその方向にも進化していくとすれば、間違い無く両社はぶつかるでしょう。
その一角に、アップルは自分の違うバリューチェーン、サービスとしてApple TVを展開していくことになると思います。
―― アプリケーション資産という意味でも有利になるのでしょうか?
夏野 売り場でお客さんには説明しやすいですよね。Androidは玄人受けはするかも知れないけれど、一般のお客さんに「このテレビはパソコンになりますよ」と説明できるのは大きい。テレビはコンシューマ製品ですからね。
Windows Mobileとは違いますよ。あれは、Excelが動きます、と言ってもフルセットのExcelが動くんじゃないんだから。それならそれこそ、普通の携帯だって出来たことです。パソコン用のソフトや周辺機器がそのまま動く、というのがポイントです。
―― 一方で、Microsoftはブラウザ(Internet Explorer)のHTML5対応は遅れています。
夏野 HTML 5の標準化自体も進みましたので、次のバージョンでは間違い無く対応してくるでしょう。そうなれば、いよいよ、Android VS Windowsの戦いが始まります。面白くなりますよ(笑)。
ただ、グーグルの方に強みがあるのは、iPhoneの時同様、別に彼らはOSの戦いで勝てなくても良いんです。グーグルが広告プラットフォームを押さえている限りは、別にWindowsを使ってくれても良いよ、と言えてしまうんです。
だから、マイクロソフトは返す刀でBingなどを立ち上げて、その領域も脅かそうとしている。こうやって見ていくと分かるように、どうしてもAndroidという携帯OSが登場してくるので、スマートフォンのような競走の仕組みで捉えがちなのですが、PC戦争の流れなんです。
HTML5対応のブラウザを搭載する、Google TV。それがテレビにもたらすものは、ハードウェアメーカーやOSメーカーにとっては、パソコンが経験した覇権争いの再来であるというのが、夏野氏が見据える、テレビの近未来像だ。
後編では、その来るべき世界に対して、日本のプレイヤーはどう向き合うべきなのか、またコンテンツに与える影響について更に詳しく話を聞く。
(記事後編につづく)
著者紹介――まつもとあつし
ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環修士課程に在籍。ネットコミュニティやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆、映像コンテンツのプロデュース活動を行なっている。デジタルハリウッド大学院デジタルコンテンツマネジメント修士。著書に「できるポケット+Gmail」など。公式サイト 松本淳PM事務所[ampm]
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