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動画サイトってどうなの? 儲かるの? ― 第5回

「イヴの時間」プロデューサーが語る、新時代のアニメ産業論

2010年04月03日 12時00分更新

文● まつもとあつし

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「イヴの時間」

 3月18日、グーグルがソニーと協力して、Android OSを搭載したテレビやSTBを開発中と報じられた。奇しくも前回はWindowsを搭載したテレビ「ROBRO」(関連記事)を取り上げた。広告の掲出機会を増やしたいグーグルは、ついにリビングの画面にも進出できるのだろうか。

 映像業界はこれまで映画館やテレビを「ファーストウィンドウ」(最初に世の中に出して、ビジネスをする場)として展開し、パッケージ化や再放送を通じ、制作費用を回収するスタイルを取っていた。そこでの成績がその後の収益を決める面も大きく、コンテンツビジネスでは非常に重要な一手となっていた。

 だが、連載で見てきたような動画サイトが一般的になるにつれ、ネットをファーストウィンドウとして選ぶことも増えてきた。ユーザーからアクセスしてもらう必要があり、コンテンツの魅力がさらに問われてくる中で、成功をおさめている作品がある。それが今回取り上げる「イヴの時間」だ。

イヴの時間は2008年に当時のYahoo!動画(現GyaO!)で配信を開始。その後ニコニコ動画でも視聴可能となり累計300万回以上視聴されている。現在劇場版が公開中だ

 NHKのデジタルクリエイター紹介番組「デジタル・スタジアム」(デジスタ)を立ち上げ、現在は有限会社ディレクションズの代表として、「イヴの時間」ゼネラルプロデューサーをつとめる長江 努氏(@tomnaga)に、その新しい方法論を聞いた。


「製作委員会方式」抜きでなぜアニメ制作が可能だったのか

―― DVDの販売不振から深夜アニメのビジネスモデルが苦境に立たされる中、「イヴの時間」DVDはAmazonランキング上位を占めています。バリューチェーンの流れに沿って伺っていきたいと思いますが、まずは制作の経緯について教えてください。

Image from Amazon.co.jp
ペイル・コクーン/吉浦康裕 [DVD]

長江 監督の吉浦康裕さんと出会ったのは、デジスタへの応募がきっかけです。作家性が前面に出る作風で、番組でも高い評価を受けていたのですが、作品「水のコトバ」で商業的にアピールできる力も発揮し始め、驚かされました。「これはモノになる」と直感し、一緒に作ったのが前作の「ペイル・コクーン」です。

 DVDで一定の成功を収めましたが、物量面で個人制作の限界も感じました。そこで劇場公開も視野に入れられるような尺(時間数)を持ったシリーズ作品をグループで作ろうと取り組んだのが、イヴの時間でした。

※バリューチェーン : 企業活動を調達・開発・製造・販売・サービスといった流れで捉えるフレームワークのこと。

―― それでも100人以上が関わるともいわれるテレビアニメに比べれば、かなりの小規模です。テレビアニメは「製作委員会方式」でビジネスに関わる各社が投資をします。今回、制作資金はどのように調達されたんでしょうか?

長江 劇場版の宣伝・配給費用を除き、「製作」はディレクションズのみです。監督やスタッフへの費用を全て負担したことで、結果的に著作権も一元的に管理する体制が取れています。ディレクションズはテレビ番組の制作がメイン業務なので、その収益を新しいコンテンツへの投資に回せるのです。

制作資金はいわば「直調達」。委員会システムを採用せず、すべて自社で調達した

製作 : 映像業界では純粋にコンテンツを作る作業を「制作」、そのための資金調達やプロジェクトマネジメント、広報活動などを総称して「製作」と区別して呼ぶことが多い

―― なるほど。「権利が分散してしまい、合議が前提になる製作委員会方式では機敏なビジネス展開が出来ない」という問題点がなかったわけですね。では、はじめに「テレビ」を選択しなかったのはなぜなのでしょうか?

長江 これもやはり、メディアを始め、大きく変化する状況に柔軟に展開したかったというのが最大の理由です。確かに尺が短いのでテレビのフィラー枠(番組のすき間に入ってくる15分程度の番組)で放送する方法もありますが、そうなると、テレビ局の意向も汲む必要が出てきます。すると今のような展開は難しくなってしまいますよね。

―― 確かに。テレビ局が番組コンテンツの著作権を保持する是非が問われている現状もあります。ですが、ネット中心に展開することによってリーチ(視聴者の幅)が狭まってしまうことについては、どのようにとらえていたのでしょう?

長江 最終的には幅広く認知度を上げることが目的でしたが、クオリティに絶対の自信があったので、まずはコアとなるファン層を構築することを最優先させました。有料配信や広告収益は狙わず、展開につながる基礎を固めることが主眼でした。

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