5つのポイントで見るiPhone4
それでは実機のレビューに移ろう。ここではアップルのCEO、スティーブ・ジョブズがWWDCの基調講演であげたポイントに沿って、iPhone 4を評価してみたい(関連記事)。
【その1】一新された本体デザイン
1つ目はデザインだ。これは黒と白のモデルで少し状況が違う。
iPhone 4の黒モデルは、ケースにいれて正面の液晶ディスプレーだけを見えるようにすると、実はiPhone 3GSとあまり見分けがつかない。
デジタル機器ではソフトウェアとそのソフトを映し出す画面こそが主役であって、ほかの要素はできるだけ目立たないようにする──。そんなアップルのデザイン哲学が引き継がれている証拠だろう。これまでのiPhoneと大きく異なるのは、前面にインカメラが付いたことだが、これも黒いのであまり目立たない。
一方、白モデルはこれまでになかった外観だ。iPhoneの白モデルはこれまでにもあったが、実は前面パネルの色は両モデルに共通して黒塗りだった。しかし今回、iPhone 4で初めて前面パネルも白に変えてきた。
前面パネルを白にすると、実はデザイン的な問題も出てくる。これまで色の暗さを利用して隠していた近接センサー(通話中にユーザーの顔が接近していることを検出するセンサー)もインカメラも思いっきり目立って隠しきれない。なので、iPhone 4では思い切って、これらをデザイン的に取り入れてしまっている。
側面は、これまでのiPhoneから大きく変わった。周囲をぐるりと覆う梨地加工のステンレスメタルは、平らな土台の上でiPhoneを自立させることができる。表面加工はきめが細かく、大きなアールを描いた角を指の腹でなぞる感触が心地よい。
これまでシーソー型だったボリュームボタンは、「+」と「ー」に分かれたふたつのボタンとなったため、同時押しが可能になった(同時押しを認識するかは不明)。
ボタンのクリック感は、かなり硬質でしっかりめな印象、同様にマナーモードもスイッチの切り替わりがしかりとクリック感で指に伝わる(それに加えてバイブレーションでも、マナーモードに切り替わったことを教えてくれる)。
背面のデザインは、アップルマークに製品名、そして必要情報といった具合に、プリントされている内容やレイアウトは旧来のiPhoneのままだが、面がフラットになったためよりシャープな印象を受ける。そして左上にある500万画素カメラのレンズが、独特の存在感をかもしだしている。
すべての面をフラットにしたことで、全体的に丸みを帯びたiPhone 3GSと比べてより薄い印象となった。これをエレガンスとほめる方もいれば、人によってはかわいらしさが抜けて「冷たい印象になった」と感じるかもしれない。そうした人のためにアップルは「Bumpers for iPhone 4」という色装飾と保護機能を備えたアクセサリーを用意している。
【その2】精細なRetinaディスプレー
2つ目の「Retinaディスプレイ」にも驚かされた。最初にiPhone 4の実物を見たときには、間違ってモックアップを渡されたのだと勘違いしたほどだ。その理由はいくつかある。
まず、画面の色合いが角度に関わらずまったく変わらないこと。これは視野角が広い「IPS方式」の液晶パネルを搭載したことにより実現した。
次に1つのドットが78ミクロン、326ppi(1平方インチあたり326ドット)とキメ細かいところ。「Retina」の由来である、網膜の認識能力の限界を超えたディスプレイのおかげだ。
画面が液晶ディスプレーの上に印刷されていると感じるくらい、表面近くに表示されている点も見逃せない。iPhone 4の実機に触る機会がある人は、ぜひ、液晶画面の表示がギリギリ見えるか、見えないかくらいの真横からのぞき込んで見て欲しい。画面表示が本体の上にのっているように見えるだろう。
これまでのiPhoneでも、パソコン用のウェブページは開けたが、ウェブページの全体を縮小表示すると小さな文字が潰れてしまい読めなかった。
ところがiPhone 4では、画面は3.5インチなので1文字は非常に小さくなってしまうが、文字が潰れずに鮮明に輪郭が描き出されている。
iPhone 4をハイビジョンカメラで撮影していたときに、カメラマンの方が驚いた。ちょうどRetinaディスプレイの高精細さを撮ろうとズームしていったのだが、まったくモアレ(画面とカメラの干渉によって生じる縞模様)が発生しないのだという。これまでのiPhoneやパソコン用のディスプレーでは、同程度の倍率にしてしまうと確実にモアレが発生していたそうだ。