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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第100回

ケータイの“ミクロな魅力”とは、なんだったのか?

2009年12月28日 12時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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ハードの進化か、プラットホームの進化か

 しかしながら、多様化するライフスタイルのすべてに合わせてケータイを何十種類もリリースできるか? と言われると正直難しいだろう。たとえばソフトバンクはPANTONEケータイに続いて、「COLOR LIFE」と「JerryBeans」の2つの多色展開端末をリリースしているが(関連記事)、あくまでそれは「色」という点での多様化だ。

COLOR LIFE

ケータイの色が増えることはもちろん楽しい。でもそれはあくまで色が多様化されただけだ

 さらに言うならば、iPhoneはそもそも色は2色しかないし、カメラに代表されるデフォルトの機能は標準的で、なにもアプリを追加しなければ、国内キャリアの大画面のタッチケータイに比べて、おサイフケータイやワンセグが搭載されていないという点で機能が劣るケータイという見方もされかねない。

 しかし導入するアプリのアイデア次第で、端末の機能や役割、性格、キャラクターまで進化させることができる。そんなプラットホームでの進化の可能性を持っているのがiPhoneとケータイの大きな違いである。

 購入時点で完成度がほぼ最大となっているケータイとはまったく違うアプローチであるが、iPhoneは端末メーカーであるアップルや通信キャリアが端末の完成度を高める作業を、アプリ開発者やユーザーのクリエイティビティにゆだねることに成功しているのだ。

 もちろん、後者が未来永劫優れた方法論だと断定できるわけではないし、ハードとプラットホームのバランスには波があると思われる。しかしながら経済性や効率性、ユーザーのニーズへの対応について見てみると、日本国内のモバイルのマーケットでハードを進化させていく路線はもはや難しいのではないか、と考えている。

 さらにモバイルやコンピューティング、ウェブのトレンドの変化に比べて、ケータイ側の1年に2~3回、新端末がリリースされるというペースはあまりに遅い。そのサイクルの最中も、スマートフォンを手にしたユーザーは次々に新しく、おもしろいアプリを見つけ、あるいは創り出して、生活に溶け込んでいっているのだ。

 この動きにフォーカスを当てて、これから取り組んでいきたいと思っている。

 2009年はありがとうございました。2010年は気持ちもタイトルも新たにお会いしましょう。

筆者紹介──松村太郎


ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET


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