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雲の向こう側がついに判明!? 「Windows Azure」

2009年10月21日 16時00分更新

文● 塩田紳二

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Windows Azureを自分のサーバー環境に構築できる?
……現時点では「ノー」

 チャペル氏は、「自前のデータセンターやサーバーで、Windows Azureを実行できるか?」という質問をよくされるという。答えは「ノー」であり、将来においては分らないが、現時点では、Windows Azureが単体のソフトウェアとしてマイクロソフトの外部に提供されることはないという。

 また、「管理者権限」に関してもよく聞かれる質問だという。Windows Azureでは、ユーザーが管理者権限を得てシステムの構築や設定変更は一切できない。その代わり、マシン(ハードウェア)やOSの管理をユーザー自身が行なう必要も一切なく、システムのパッチ(アップデート)なども自動で行なわれるというメリットがある。

Windows Azureの利用例

 チャペル氏が「Azureに向いている」サービスとして挙げたのは、

  • 負荷の変動が激しいアプリケーション
  • 高い信頼性が必要なアプリケーション
  • 大規模な拡張が必要なもの
  • 短時間、あるいは使用期間が予測できないアプリケーション
  • 新規事業

などだ。特に「新規事業」(インターネットを使った新規サービスの展開を目指す、ベンチャー企業のスタートアップ)に関しては、「米国ではそのほとんどが失敗に終わる」という。だからこそ、いかに効率的に「失敗」するかが重要であり、失敗のコストを小さくする必要がある。このようなときに自分たちで「データセンター」を構築するようなやり方は間違いで、Windows Azureのようなクラウドシステムを利用すべきだという。

 また、「Azureは、ホスティングサービスと競合するのか?」という質問も多い。実際のところ、ある部分では、Windows Azureはホスティングサービスと競合する。しかし、ホスティングサービスにはユーザー自身がサーバーを完全に制御可能というメリットがある。また、今やコモディティー(日用品)ビジネスであり、コストが安い。このため、完全な競合にはならず、ユーザーの目的によって使い分けられるだろうという。

 さらに、Windows Azure上ですべてのアプリケーションやデータを持たせるのではなく、一部の処理のみ任せる、データベースは別のストレージサービスを使うといった部分的な利用も検討してみるべきだ、とも語った。現実的に使える運用コストと、求める信頼性や冗長性を勘案して、どこまでWindows Azureを利用し、どこから別のサービスや自社構築を行なうべきか、といった考え方は、コスト意識の高いコンサルティング業者らしい実践的なアドバイスといったところだ。


Amazon EC2やGoogle App Engine、Force.comとどう戦う?
…….NETアプリ開発者にはAzure!?

 チャペル氏は、先行している他社のクラウドサービスとの比較も行なった。Amazon EC2には、完全な管理権限があり、すべてをユーザー自身で管理できるという点が一番の違い。どのようにも設定できる半面、管理や環境構築をユーザーが行なわねばならない。そのコストをどう見るかがAzureを選ぶか否かの判断基準だろう。

 Google App Engineは、なるべく簡単にコンシューマーWebアプリケーションを作るためのサービスだが、利用できるプログラミング言語が限られるなど制限は多い。それに比べてWindows Azureは、アンマネージドアプリケーションも利用できるなど、既存のさまざまな.NET開発言語が利用できる。

Windows Azureと他社のクラウドサービスとの比較

 SalesForce.comのForce.comサービスは、設計思想こそWindows Azureに似ているが、エンタープライズアプリケーションに特化している。そのため、社内にデベロッパーがいなくてもアプリケーション開発が可能だ。ただし、Force.comのクラウド上でしか動作しない。Windows Azureは、もっと広範囲のアプリケーションに対応できるが、.NETアプリケーションのデベロッパーが必要とある。また、既存の.NETアプリをWindows Azureへ移植することのが容易というメリットはある。

 最後にチャペル氏は、「すでにクラウドプラットフォームの時代は到来しており、新しい世界が幕を開けつつある。今すぐに参加の準備すべきだ」と、集まったソフトウェア開発者にエールを贈って、講演を締めくくった。

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