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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 ― 第71回

「ゼロ戦」化する日本の情報技術

2009年06月17日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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世界最高の性能を生かせなかった
悲劇の戦闘機

 海外から来た友人が日本の携帯電話をみると、みんな驚く。なにしろ携帯端末にテレビがついて、動画・音楽配信や電子マネーの機能までついているのだから。しかし次に「このサービスはアメリカでもやっているのか?」と聞かれてノーと答えると、不思議そうな顔をする。「なぜ海外でもやらないのか」と言うのだ。

ゼロ戦 靖国神社の遊就館にたたずむゼロ戦。開戦当初ゼロ戦に苦戦を強いられたアメリカ軍は徹底的にその性能を研究し、運用面の工夫や機体の改良、新鋭機の投入で逆転を果たす

 この質問に答えるのは難しい。正確に言うと、海外で携帯サービスをまったくやっていないわけではない。NTTドコモの「iモード」は十数ヵ国でサービスを行なっているが、ほとんど普及していない。これに対応した専用端末でないとサービスが使えないからだ。欧州で主流になっているWAPはiモードに比べると機能は見劣りするが、ソフトウェアを移植すればどの端末でも使えるため、先行したiモードを逆転した。

 日本の携帯電話は、単体の性能としては世界最高水準だが、それを使うシステムができていないため戦争に負けた「ゼロ戦」みたいなものだ。ゼロ戦の性能は登場当時としては世界最高であり、日本の「ものづくり」の水準を世界に知らしめるものだった。しかしそれが活躍したのは1年余りで、ゼロ戦の弱点の研究が進み、グラマン(F6F)などの新鋭機が出てくると、それに対抗できなかった。

 その原因は、ゼロ戦があまりにも「名人芸」によって開発されたため、それを作れる技術者が少なく、性能をぎりぎりまで追求して完成度を高めたため、拡張性に乏しかったためだといわれる。また戦闘機を援護するレーダーなどの情報機器の開発が遅れたため、攻撃態勢に入る前に撃墜されることが多くなった。木村英紀『ものつくり敗戦』は、このようなシステム化の欠如が、ゼロ戦の性能を生かせなかったと指摘している。

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