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池田信夫の「サイバーリバタリアン」第94回

沈没した「スパコンの戦艦大和」は再浮上するか

2009年11月25日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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国家戦略なき事業仕分けの迷走

 理化学研究所で建設が進められている次世代スーパーコンピュータの予算が、行政刷新会議の事業仕分けで「来年度の予算計上の見送りに限りなく近い縮減」と査定された。これに対して科学者から反対の声が上がり、菅直人副総理(国家戦略担当)や仙谷由人行政刷新相も見直しを示唆している。しかし予算を切れば、利害関係者から反発が出るのは当たり前だ。それによって白紙に戻るようでは、何のための事業仕分けだったのか。

理研のサイトより 理研のサイトより。日立とNECの離脱により、ハイブリッド構成からスカラ型になったスーパーコンピュータ構想。一方NECはインテルと提携し、今後もスパコンビジネスを進める

 間違いの始まりは、8月30日に総選挙で民主党が政権を取った翌日に、各省庁から概算要求が提出されたことだ。例年はここから査定が始まるが、鳩山内閣は「政治主導」を演出しようと、各省庁に出し直しを求めた。このため概算要求の改訂版が出てきたのは10月16日だったが、その総額は約95兆円。今年度の当初予算88兆5000億円に、民主党の子ども手当などの政策経費7兆円をそっくり上乗せしただけで、それ以外の予算はまったく減っていなかった。

 これをせめて92兆円に減らそうと、ドタバタの事業仕分けが始まった。1件1時間の駆け足で、問題の次世代スパコンの予算も「世界一になる必要はあるのか」という「仕分け人」の追及で、事実上の凍結が決まった。本来なら科学技術政策をどうするかという国家戦略を決め、その上で個別のプロジェクトへの予算配分を考えるべきなのに、まず戦術レベルの予算カットを行なってから、それを国家戦略担当相がひっくり返すのは順序が逆だ。

 もともと1150億円という世界最高の価格が(随意契約で)決まったのは、高価なベクトルプロセッサを使うためだった。ところが当初の3社共同事業から、NECと日立が脱落してベクトル型がなくなり、富士通のスカラ型の部分だけ残った。これは汎用CPU(中央演算装置)を多数つなぐだけなのでコストは下がるはずだが、どういうわけか完成が2012年に延期されて予算は1230億円に増額された。これは今、世界でもっとも高価なスパコンが1億ドル(90億円)程度なのに比べて格段に高い。

 しかもこれだけ大きな設計変更で「片翼飛行」になったのに、理研は「性能に影響はない」という。それなら当初の「ベクトル型が不可欠」という説明は嘘だったのか。これは世界一という「国威発揚」のために無意味な「巨大戦艦」に税金をつぎこんで、ITゼネコンを救済するプロジェクトではないのか。本来の国家戦略に立ち返って、スパコンの必要性を再検討すべきだ。

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