ブック検索をめぐる意味不明の騒動
Googleのブック検索をめぐる和解について、騒ぎが広がっている。私のところにも、いろいろな出版社から告知が来た。多くの出版社が和解に参加するが、データベース化は拒否するという方針を打ち出しているようだ。私の本についてはデータベース化されているわけでもないので放置していた。
![]() | 現時点のGoogleブック検索では「ノルウェイの森」と検索しても、その関連書籍の一部分が表示されるだけで、実際の作品そのものを読めるわけではない |
|---|
ところがいろいろな人が騒ぎはじめ、谷川俊太郎氏などが記者会見して「Googleは傲慢だ」とか「文化独裁だ」などと非難し、約180人の著作権者が和解から離脱すると語った。しかし、谷川氏を初めとする日本ビジュアル著作権協会は、この和解の内容を理解しているのだろうか。
まず基本的なことだが、今回の和解についての通知の主体は、Googleではなく第三者たる和解管理者である。この訴訟はアメリカではすでに終わっており、出版社側も和解に応じたのだから、非難するならアメリカの裁判所を非難すればいい(笑いものになるだけだが)。またその和解の効力が日本にもおよんだのは、ベルヌ条約によって自動的に発生した結果でGoogleの意志とは無関係だ。
さらに滑稽なのは、これによって「『ノルウェイの森』が無断複製される可能性がある」と報じるNHKや、「日本文化が破壊される」などというコメントを流す新聞だ。彼らはGoogleブック検索を使ったことがあるのだろうか。これは基本的に著作権の切れた本を図書館でスキャンしてデータベース化するサービスで、著作権のある本はごく一部しかデータベース化されていない。
試しに「ノルウェイの森」を検索してみると、27件しか出てこない。もちろん村上春樹氏の本はなく、出てくるのは(データベース化に同意した)一部の出版社の本だけだ。その項目をクリックすると、出てくるのは「ノルウェイの森」という言葉を含むページだけだ。
現時点のGoogleブック検索は対象が限定され、表示される範囲が狭く、印刷もできないため使いにくいサービスで、これが文化を破壊するようなインパクトは(よくも悪くも)ありえない。仮に村上氏の本がデータベース化されたとしても、その1ページがGoogle上で見られたことで損害が発生するはずがない。むしろ多くの人に知られて、売れる効果のほうが期待できる。
この連載の記事
- 第137回 大震災でわかった旧メディアと新メディアの使い道
- 第136回 拝啓 NHK会長様
- 第135回 新卒一括採用が「ITゼネコン構造」を生む
- 第134回 周波数オークションはなぜつぶされたのか
- 第133回 スマートTVは日本では生まれない
- 第132回 無線の「破壊的イノベーション」がネットワークの構造を変える
- 第131回 グーグルとヤフーの提携はネットビジネスの一合目
- 第130回 NTTの「構造分離」よりも通信ビジネスの「構造改革」を
- 第129回 ソフトバンクは日本を変えるか
- 第128回 宇多田ヒカル事件の示すクリエイターと企業の「契約」の恐さ
- この連載の一覧へ















