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オフィシャル系動画配信陣営の反転攻勢となるか?

Yahoo!のGyaO買収は何を意味するのか?

2009年04月14日 06時39分更新

文● 松本 淳

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準備は着々と進められていた。

 USENは3月16日に発表した組織変更でGyaO事業本部を廃止、4月1日には「株式会社GyaO」にその事業を移管するとしていた。それに先立ち、2月27日には合弁運営を行なっていた有料動画配信サイトShowtimeの全株式を楽天株式会社に譲渡。動画コンテンツ事業を切り離していくステップを進めており、今回のGyaO売却はその総仕上げとも言えるだろう。

 一方のヤフーでは、GyaO設立と同じ年の2005年に、ソフトバンクと共同でTVバンク株式会社を設立。GyaOに対抗する形で広告付き無料配信を開始し、ソフトバンクホークスの試合生中継など、P2P技術を用いた同時配信などで一定の実績を上げるも、2月末現在で約2200万人の登録視聴者数を保持するGyaOには及んでいなかったようだ。

 また、投稿型動画サービスのYahoo!ビデオキャストも4月5日にサービスを終了。1日1億ページビューを誇る巨大ポータルサイトの強みを、動画分野に限ってはうまく発揮できていない状況が続いていた。Yahoo!動画においても2008年は新規の大型作品の配信は思い出すことができない。おそらく作品調達を大幅に絞っていたと想像される。

 今回の発表から振り返ると、映像コンテンツ分野で苦戦するUSENと、動画分野を強化したいヤフーが事業提携などを視野に調整を進めていたと見るのが自然だろう。

動画配信ビジネスはお荷物なのか?

 投稿系の動画配信サービスに目を転じると、YouTube、ニコニコ動画とも黒字化を達成できていない。一部コンテンツパートナー、例えば角川グループが月間売上1000万円を発表するなどの好調も伝えられるが、プラットフォーム全体としては苦しい状況が続いている。人気が増して、トラフィックコストが増える一方で、配信コンテンツに対する広告出稿が追いついていないジレンマがそこにはある。

 2008年は、TV局も軒並みネット配信サービスを整備した。もっともスケールの大きかったのがNHKオンデマンドだ。1000本のアーカイブとニュース番組などをラインナップし、2009年3月までに売上4億円、会員登録8万人を目指していたが、達成はできなかったようだ。2009年1月には完全無料化した第2日本テレビが単月黒字化したが、先の角川同様、他に波及する動きとはなっていない。

 ヤフー、USENも含めたこの状況を見て、「動画配信ビジネスは儲からない、お荷物だ」と判断を下すのは、一見妥当にも思えるが、筆者は一括りにこのカテゴリを評価することは出来ないと考えている。これまで見てきた状況を下の表のように整理すると、動画配信ビジネスの未来像が見えてくるし、今回の大型買収の持つ意味も明らかになるはずなのだ。

配信されるコンテンツ サービス例 収益源
オフィシャル系動画(プロが制作) GyaO・第2日本テレビ など マス広告・課金
投稿系動画(アマチュアが制作) ニコニコ動画・YouTube など ニッチ広告

<冒頭で述べたように、各サイトともそれぞれの機能も併せ持つが、どちらに主軸があるか筆者の独断で分類した>

次ページに続く

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