ブランド置き換えに奇策ナシ
同社では、パナソニックブランドへの一本化にあわせて、高付加価値タイプエアコンで40%、ドラムタイプ式洗濯機で40%、401リットル以上の冷蔵庫で30%、サイクロン式高付加価値タイプで30%という、短期的なシェア目標を掲げている。
高見本部長は、「中期的に見れば、白物家電全体で、5ポイント程度のシェア引き上げを達成しなければ、ブランド統一の成果が出たとはいえない」と強気の姿勢を見せる。
だが、裏を返せば、「ナショナルのテレビ」をはじめ、ナショナルブランドに親しんできた50代、60代の「ナショナルファン」を、どうフォローするのかは、同社に突きつけられた大きな課題だといっていい。
それは、これまでナショナルショップとして、地域に密着した販売活動を行ってきた全国1万8000店の地域販売店にとっても同様の意味がある。現在、日本には、約1億5000万台のナショナルブランド商品が、家庭で利用されているといわれる。平均すると一家に3台はナショナル商品がある計算だ。
このインストールベースの大きさと、高い信頼のブランドを、新たなブランドに置き換えるのは並大抵のことではない。
「パナソニックブランドによって、いま以上の価値をお届けできることを、地道に証明していかなくてはならない。それには、長い年月がかかるだろう。ナショナルのブランド価値は十分熟知している。だからこそ、ここに奇策はないと考えている」と、高見本部長は語る。
そして、こうも語る。
「いいことばかりを訴求していくだけでは、信頼は得られない。こうした使い方をすると、むしろデメリットになる、ということも、しっかりと訴求していく。これがお客様第一主義でのモノづくりにつながる」
パナソニックブランドの新たな信頼は、これから登場する商品、サービスによって証明していくというのが、高見本部長の姿勢だ。
そして、高見本部長が、チャンスと語るもうひとつの理由には、「仕事のやり方を変えるきっかけになる」という点だ。高見本部長は、本部長就任以来、1年先まで商品企画の手を打てる体制づくりに取り組んできた。それにより周到な準備を進め、シェアを高める施策を展開できるからだ。事実、ナショナル商品は、ここ数年、あらゆる分野で成功を納めてきた。だが、その成功の連続が、ともすれば社内に慢心を生む可能性もあったともいえる。
「パナソニックブランドの家電製品とはどんなものか。それを改めて考え、試行錯誤することで、負けない商品の創出につながる」
求められるのは負けない商品の連打。そのためには、社内に常に危機感が無くてはならない、というのが高見本部長の持論だ。ブランド統一は、社内における危機意識の回復、意識の変革につなげるチャンスと捉えている。
次ページ「パナソニックの白物家電は、超省エネ、超UD、そして……」に続く
この連載の記事
-
最終回
ビジネス
パナソニック――大坪社長が語る“今”とこれから -
第21回
ビジネス
GP3最終年度に突入。パナソニックが挑む試練 -
第20回
ビジネス
パナソニックを支える技術「UniPhier(ユニフィエ)」 -
第19回
ビジネス
パナソニックが技術で魅せる「総合力」 -
第18回
ビジネス
パナソニックの3つのエコアイディア戦略とは -
第17回
ビジネス
パナソニックが中期経営計画に環境経営を盛り込む理由 -
第16回
ビジネス
パナソニックが抱えるグローバル戦略の課題とは -
第15回
ビジネス
北米市場で構造改革の成果が試されるパナソニック -
第14回
ビジネス
欧州市場から世界を狙うパナソニックの白物家電事業 -
第13回
ビジネス
中国でのパナソニックの成長を下支えする中国生活研究センターとは -
第12回
ビジネス
EM-WINで新興国市場を攻略するパナソニック - この連載の一覧へ