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世界企業パナソニック 90年目の決断 第2回

日本企業は世界でどう戦うべきか?

ブランド変更に奇策なし!――ナショナルからパナソニックへ

2008年10月08日 04時00分更新

文● 大河原克行

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ブランド置き換えに奇策ナシ

日本に暮らす人ならば、誰もが見覚えのあるナショナルの看板

 同社では、パナソニックブランドへの一本化にあわせて、高付加価値タイプエアコンで40%、ドラムタイプ式洗濯機で40%、401リットル以上の冷蔵庫で30%、サイクロン式高付加価値タイプで30%という、短期的なシェア目標を掲げている。

 高見本部長は、「中期的に見れば、白物家電全体で、5ポイント程度のシェア引き上げを達成しなければ、ブランド統一の成果が出たとはいえない」と強気の姿勢を見せる。

だが、裏を返せば、「ナショナルのテレビ」をはじめ、ナショナルブランドに親しんできた50代、60代の「ナショナルファン」を、どうフォローするのかは、同社に突きつけられた大きな課題だといっていい。

 それは、これまでナショナルショップとして、地域に密着した販売活動を行ってきた全国1万8000店の地域販売店にとっても同様の意味がある。現在、日本には、約1億5000万台のナショナルブランド商品が、家庭で利用されているといわれる。平均すると一家に3台はナショナル商品がある計算だ。

 このインストールベースの大きさと、高い信頼のブランドを、新たなブランドに置き換えるのは並大抵のことではない。

 「パナソニックブランドによって、いま以上の価値をお届けできることを、地道に証明していかなくてはならない。それには、長い年月がかかるだろう。ナショナルのブランド価値は十分熟知している。だからこそ、ここに奇策はないと考えている」と、高見本部長は語る。

 そして、こうも語る。

 「いいことばかりを訴求していくだけでは、信頼は得られない。こうした使い方をすると、むしろデメリットになる、ということも、しっかりと訴求していく。これがお客様第一主義でのモノづくりにつながる」

 パナソニックブランドの新たな信頼は、これから登場する商品、サービスによって証明していくというのが、高見本部長の姿勢だ。

 そして、高見本部長が、チャンスと語るもうひとつの理由には、「仕事のやり方を変えるきっかけになる」という点だ。高見本部長は、本部長就任以来、1年先まで商品企画の手を打てる体制づくりに取り組んできた。それにより周到な準備を進め、シェアを高める施策を展開できるからだ。事実、ナショナル商品は、ここ数年、あらゆる分野で成功を納めてきた。だが、その成功の連続が、ともすれば社内に慢心を生む可能性もあったともいえる。

 「パナソニックブランドの家電製品とはどんなものか。それを改めて考え、試行錯誤することで、負けない商品の創出につながる」

 求められるのは負けない商品の連打。そのためには、社内に常に危機感が無くてはならない、というのが高見本部長の持論だ。ブランド統一は、社内における危機意識の回復、意識の変革につなげるチャンスと捉えている。

次ページ「パナソニックの白物家電は、超省エネ、超UD、そして……」に続く

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