ニコニコ動画が包括契約できたワケ
── 著作権侵害というと、ニコニコ動画でも日常的に起こっていますが……。
津田 ニコニコ動画は、当初から権利者の削除要請に応えていました。
その上で適正な運営ができるように、「著作権料は支払う」ということを権利者に対して言い続け、現在は音楽著作権だけですが、JASRACと包括契約※を取り交わしています。削除要請と著作権料を支払うという両方を継続的にやっていたから、ギリギリのところで大規模な提訴までには至らなかったということですね。
また、親会社のドワンゴは合法的な着うたビジネスなども展開しており、音楽業界のコンテンツプロバイダーという側面も持っています。そういう意味で関連団体と話し合うウィンドウが最初からあったということも大きいでしょう。
※包括契約 JASRACが管理しているすべての作品を利用できるという契約形態。多数のコンテンツが投稿される動画共有サイトでは、動画に使われた楽曲を1曲ごとに申請して利用許諾を取るのは手間がかかるため、包括契約が採用されている。ちなみにニコニコ動画は、サービスの収入のうち1.875%を著作権使用料として支払っている。
損害金はなぜ1億2800万円なのか
津田 ところで今回の件で注目したいのは、JASRAC側が主張している 「1億2800万円余」という損害金です。
── と言われますと?
津田 個人的にはこの金額は、すごく大きく見積もったものだと思っています。
ニコニコ動画は、JASRACが管理する楽曲を自サイト内で利用できるようにするために「収入の1.875%」という金額を支払っています。ところが今回の損害金は、1曲1回という使用料に基づいて算出されている(1億2800万余÷381万2198回再生=1回あたり33.5円程度)。
ジャストオンラインの売り上げがいくらかは分かりませんが、仮に包括契約を結んでいたら、ここまで高額にはならなかったはずです。過去の例を見るとJASRACは提訴する際、高くなる「料金プラン」で見積もって損害賠償を請求することが多いんです。今回もその意味では高額ですし、恫喝的な損害賠償請求に見えてしまうところはありますね。
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