ガイドラインにしたがっていても違法?
── プロバイダー責任法が今回の裁判とどう関係しているのでしょうか?
津田 ジャストオンライン側は「プロバイダー責任法が定めたガイドラインに準じて、適切な措置を取ってきたので合法だ」と言いたいのでしょう。
しかしプロバイダー責任法でも、違法とされるサービス側がコンテンツの存在を認知しており、それを知るに足りる相当の理由がある場合は、損害賠償責任を負わなければならないとしています。
削除依頼に応じているサービス事業者が免責されるか否か。それを考える際にポイントになるのが「ファイルローグ事件」※の判決です(関連記事)。
ファイルローグを提供していた日本MMOは、権利者の削除要請に応じていました。しかし、裁判所はサービス上で交換されていたファイルの大部分が音楽CDを複製したものであることなどを理由に、日本MMOも「著作権侵害の主体である」と判断されています。つまり、プロバイダ責任法で「免責」されなかったということですね。
※ファイルローグ事件 ファイルローグは、P2P技術を使った、サーバー型のファイル交換システム。2002年2月、このサービスの著作権侵害を理由に、日本レコード協会と同協会会員19社、JASRACが約3億6500万円の損害賠償を求めて裁判を起こし、2003年12月、約6700万円の支払いを命じる判決が出た。
米国を見てみると、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)では、日本のプロバイダ責任法と同様の免責事項(セーフハーバー)が設けられており、ガイドラインに沿って運営をしていればサービス事業者は免責されます。しかし、日本の場合、ガイドラインにしたがっていても「違法」と判断される可能性がある。少なくとも米国より日本の方が違法とされる可能性は高い。そうなると、サービスの著作権侵害対策レベルも変わってくる。
具体的に言えば、YouTubeのような動画投稿サイトが流行したとき、日本から「eyeVio」や「ワッチミー!TV」のような類似サイトが立ち上がりました。こうしたサービスの大半は、アップロードされた動画を公開する前に著作権侵害が行なわれていないかを確認しています。
これは法的リスクを最小限に抑えるためやっているもので、もちろんコストはかかりますが、訴えられてしまう可能性がある以上そうせざるを得ない。
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