塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第12回
塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”
愛はあふれるもの
2008年08月10日 15時00分更新
インターネットがなかった時代、多くの人にとって社会は、自分がどんなにギブしても、せいぜい周囲の知人たちしかテイクできないところだった。作家とか作曲家とか、一部の「プロ」だけが、社会にあまねくギブするチャンネルを持っていた一方で、それ以外の一般人は、そうやってアウトプットされたものを選択してテイクすることしかできなかった。
その流れは、プロから一般人への一方通行。ほとんど循環していなかったのである。新聞やラジオに投書するといった一部を除けば、個人のアウトプットを「内輪」以上に広げることは困難だった。
でも現代はもう一方通行ではない。誰もが自分のアウトプットをウェブに公開できる。個人の表現を社会全体に対してギブする仕組みが整ったのだ。思いつき、アイデア、そのほか自分が表現したものを、即座に人に見せたり聞かせたりできる。今までだったら内輪に埋没してしまっていた小さな表現でも、社会にギブして人々の役に立てる。ステキな仕組みだ。
だからもう、ギブを人任せにしてテイクばかりする時代ではない。ひとりひとりが少しずつギブすることで、ウェブで広がる「give and take」の流れを大きくしよう。
もし特にギブするものが見つからなくても、愛を注ぐことなら誰でもできる。他人の日記やブログに対して温かいコメントを送ったり、そのアイデアをほめたり、おかしなことを書いているサイトを広い心で見守ったり。ウェブを愛で満たそうではないか。あら探しとか、意地悪とか、人が不快になることに労力を使うのではなく、人を大切にするやさしい気持ちを注ごうではないか。
(次ページに続く)
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