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中国IT小話――MP3工場の集まる中国広東省で見つけた、そっくりもの

2007年05月07日 00時00分更新

文● 山谷剛史

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 世界の工場中国。その中でも工場が集中する広東省。そこではMP3プレーヤーが大工場から町工場まで様々な場所で生産されている。

 海賊版問題でアメリカからWTOに提訴され、日本やEUがそれに参加しても、この工場地帯ではどこ吹く風か。今日も「それデザインがパクリじゃないですか」という製品を生み出しつづけている。

これが業界紙だ!

これが業界紙だ!

この中に類似品が紛れ込ん でいる。気分は「ウォーリーを探せ」

この中に類似品が紛れ込ん でいる。気分は「ウォーリーを探せ」

 そんな広東省のMP3プレーヤーメーカーの業界紙を入手したので紹介したい。そこではどこかで見たようなMP3プレーヤーの写真がこれでもかとあり、ただただ驚愕の連続である。



なんか似てませんか?


 まず紹介したいのは、リンゴマークの某メーカー製品そっくりのMP3プレーヤーだ。アキバにもたまにこの種の製品が入荷されるが、本場中国はそんなもんじゃない。

 中国では長い間“激安MP3プレーヤー”の勢力が強かったが、ようやっと『iPod』をはじめとした“ブランドモノのデジタルオーディオプレーヤー”が注目され始めた。中国人にとってはプレミアムなデジタルガジェットという位置付けだ。一方でそれがブームとなれば、それに追随するかのように類似品がリリースされる。電脳街や大型電器店チェーンに行けばビミョーな外観の製品をちらほら見かけることができるだろう。

 MP3プレーヤーメーカーが集う本場広東省の業界紙を見れば、これがただごとではないことは想像できよう。これを見た後はどれが本物のiPodかわからなくなるかも!?

“りんご”をイメージさせる画面

“りんご”をイメージさせる画面

画面に堂々と“apple”と書いてある

画面に堂々と“apple”と書いてある

一番左の4色リンゴは、かなり無茶をしているよう な……

一番左の4色リンゴは、かなり無茶をしているよう な……

名前にも注目。日本語に訳すと左が「小りんご」、右が「長りんご...

名前にも注目。日本語に訳すと「小りんご」(左)、「長りんご」(右)

こちらは「スーパー小りんご」(左)に「りんご王」(右)

こちらは「スーパー小りんご」(左)に「りんご王」(右)

なんかよく分からない“ギザギザ”が付いている

なんかよく分からない“ギザギザ”が付いている

背面にウェブカムが付いた ものも

背面にウェブカムが付いた ものも

これも“りんごブーム”に便乗した製品か!?

これも“りんごブーム”に便乗した製品か!?

 ところでこういった製品をどこで買うことができるのかというと、残念ながら工場からの卸売りのための業界紙なので単品購入はできない。中国の電脳街でもすべてを拝むのはまず無理だ。



まだまだあるパチモノ


 同じ業界紙には、他社ブランドそっくりの製品も掲載されていた。例えば、中国業者の真似したくなるデザイン(?)にノキアの携帯電話がある。

iPodに良く似た製品の なかにさりげなくノキアが 紛れ込んでい...

iPodに良く似た製品のなかにさりげなくNOKIA 7260にそっくりな製品が紛れ込んでいる

「小ノキア」という名前のものも

その中のひとつには「小ノキア」という名前が付けられていた

 意外にもパナソニックのSDオーディオプレーヤーや、ソニーの“ウォークマン”など日本のシリコンオーディオプレーヤーに似た製品は、東芝gigabeat以外はなかった。真似しにくいのか、まねするほど認知されておらず、魅力が薄いためなのか、真偽は分からない。

こっちは東芝の“gigabeat”っぽい形をしている

こっちは東芝の“gigabeat”っぽい形をしている

なんかgigabeatと iPod shuffleを足して2 で...

なんかgigabeatと iPod shuffleを足して2 で割ったような感じ

「VAIVO」か「VAVIVO」か、ソニーのVAIOに似た製 ...

「VAIVO」か「VAVIVO」か、ソニーのVAIOに似た名前だ

 “パチモノ”ばかりを紹介したが、この業界紙の中で最も多いモデルは、秋葉原でもノンブランドでよく見かける、スタンダートなスティック型タイプや、長方形タイプであった。ただパチモノと上記のスタンダートタイプだけでなく、ほかにも変なデザインのものや、変わったコンセプトの製品も中にはある。そういったものも紹介しておこう。

こちらはたけのこ型のMP 3プレーヤー

こちらはたけのこ型のMP3プレーヤー

ボール型というか目玉おや じ風のMP3プレーヤー

ボール型というか目玉おやじ風のMP3プレーヤー

十字架型のプレーヤー。首から提げて使う?

十字架型のプレーヤー。首から提げて使う?



すべてが、すべてではない


 最後に小話的に。中国というと、ことノンブランド製品に関しては、うさんくさいイメージが正直あると思う。

 例えば今年3月にドイツで行なわれた“CeBIT”には、中国最大の周辺機器メーカーで、MP3プレーヤーメーカーでもある“愛国者”(aigo)のMP3プレーヤーが槍玉に上げられた。MP3関連のライセンス管理を行なっているイタリアのSisvelに対し、愛国者がライセンス料を払ってないとして、ドイツの税関で差し押さえられたのだ。結果として、愛国者はCeBitにブースは設けたが製品を展示できないという事態となった。

 しかしこれには後日談もあって、実は愛国者がMP3のライセンス料を払っていたという事実が、CeBITが終了して時間の経過した4月末に分かった。これに対してドイツ税関は謝罪している。

 確かに中国の多くのメーカーが正当なライセンス料金を支払っていないということが中国のIT系ウェブメディアのニュースでも伝わっている。が、中にはちゃんとやるべきことはやっている会社もあるわけだ。今回紹介した製品をアキバでも販売したい、販売してほしいという声もあるかとは思うが、実際日本に輸入するとすれば、ちゃんとやることをやっているメーカー、製品なのかどうかを確認しなくてはならないだろう。


山谷剛史(やまやたけし)

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。

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