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「サービス産業向け次世代技術EXPO・キャッシュレスTech」説明会&講演会

経営者が悩む人手不足/業務効率化/インバウンドへの秘策とは?

2018年08月06日 06時30分更新

文● MOVIEW 清水 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP

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 2019年2月19日から22日までの4日間、東京ビッグサイトにて「サービス産業向け次世代技術EXPO・キャッシュレスTech」が開催される。サービス産業が抱える人手不足、業務効率化、インバウンド需要の対応を自動化技術やAIといった次世代技術で解決、ビジネスを伸ばすための展示会である。

 7月上旬、同展示会の出展企業募集にともない、説明会と講演会が開催された。講演にはセカンドファクトリーおよびブエナピンタ代表取締役であり、徳島の地産地食レストラン「THE NARUTO BASE」を手掛けている大関興治氏が登壇。「レガシーな飲食・旅行業にこそチャンスあり! サービス産業×IT・キャッシュレスでビジネスを伸ばす 顧客・従業員満足度を高める仕掛けとは?」と題した講演を行なったほか、アスキー編集部の大谷イビサとの対談、来場者との質疑応答など、次世代技術やキャッシュレスという話題の熱さがうかがえた、実に濃い内容の講演会となった。

サービス産業が抱える課題とIT化への期待

 大関氏の講演の前に、大谷からサービス産業の現状についての解説が行なわれ、「人手不足」と「業務効率化」、そして「インバウンド対応」の3つの問題が目下あることを提起。サービス産業の7割が人手不足であり、長時間労働や給与水準の低さといった要因とともに、ITによってサービス産業を変えられるかということについて、各業種の例を提示した。

株式会社角川アスキー総合研究所 アスキー編集部 大谷イビサ

 たとえば箱根の老舗旅館では宿泊者からのFAQを解析し直し、外国人がどういうことに興味を持つかを調べたところ、入れ墨での入浴や、駐車場の有無といった、従来想定していない項目が注目されていることが判明。細かい改善で客を増やした好例がある(関連記事)。また、農業ではIT企業から提案されるセンサーやカメラといったことではなく、多角化している農家は作物の販売についての経営システムをほしがっているといったミスマッチが生まれていることを示した(関連記事)。

 伸びしろが大きいサービス産業だが、ロボットやAIといった技術が実用段階に入り、キャッシュレスといったITと組み合わさることで、より一層の効果が見込めるが、一方でサービス産業側にはIT業界に搾取されるのではないかという危機感もある。サービス産業へのIT化の期待とともにそのような課題をあげ、大関氏の講演にバトンタッチした。

生産から集積、加工、販売までをつなぐ「THE NARUTO BASE」

株式会社セカンドファクトリー 代表取締役 CEO&CVO ブエナピンタ株式会社 代表取締役 CEO&CVO 大関興治(おおぜき こうじ)氏

 大関氏は、コンシューマーサービス企業をクライアントにコンサルティングやプロダクト開発支援を手掛けてきた人物。現在「食」をテーマに、プロダクトなどを作るのではなく、これまでつながらなかったさまざまな要素をつなげることにこだわって活動している。その1つが、徳島県に設立した共創プラットフォーム「THE NARUTO BASE」だ。

 THE NARUTO BASEは一種のソリューションであり、生産者としての農家から食品の加工場、さらに販売先であるレストランやホテルなどの間をつなぐフルITのプラットフォームである。

 農家がAI農業をやりたいという際や、レストランが働き方改革を行ないたいという際にも、同プラットフォーム上の生産者支援クラウドサービスや販売支援クラウドサービス、店舗支援クラウドサービスなどを活用し、必要な物やサービスを必要とする人や企業へ提供することができる。

 たとえば完熟トマトが売れ残って困っている農家があるとする。徳島から東京へ持ってきても売り物にはならないが、ペーストにできる加工工場などのリソースがあれば、そこを活用して届けることはできる。そうした間をつなぎ、農家からレストラン、ホテルまで、あらゆる人・企業が参画できるプラットフォームを作り上げた。こうした動きは次のステップに進んでおり、同様のフォーマットが秋田県で「THE AKITA BASE」として立ち上がり、今後も各地に広がっていこうとしている。

 さらに大関氏は、江ノ島でITを活用した海の家を運営し、さまざまな知見を蓄積している。

 たとえば人力で行なっていた海の家の貸しロッカーの忘れ物のチェックを、センサーの確認で省略し、同じくトイレの清掃といった仕事のタスクもセンサーによって5回使用したら清掃するという形で最適化できる。

 これまで効率化と言われてきたことは、あくまで企業からの視点であり、さまざまな効率化で働き方を考えることで従事者満足が向上し、それがビジネスインパクトにつながっていくと大関氏は述べる。

体験ドリブンで考える顧客満足の向上が重要

 では、「THE NARUTO BASE」や海の家で蓄積したノウハウは、サービス産業とITをつなげることによるビジネス効果でどのような効力を発揮するのか。

 先進国における労働生産性上昇率で、日本のサービス業は7位。「おもてなし」などでリピートも多いが、それは人海戦術で支えているだけで、続けることができるのか? と大関氏は疑問を投げかける。それではなぜIT化が進んでいないのか。大関氏が提示ししたのは3つの理由だ。

 1つ目はビジネスモデルにマッチしていないこと。サービス業は現在55万軒もの店があり、その入れ替わりがとても早く、高価なシステムを導入するのが難しい。さらに、システム投資の経験をしている人が少ない点も理由となる。

 これに付随する形でハードウェアを購入しているという点が2つ目の理由だ。たとえばPOSを導入した場合、POSレジというハードウェアを購入しており、そこにバーコードスキャナーなどがついてくる形で、決してソフトウェアを購入しているわけではない。サービス産業では、よりよいことをするきっかけではなく、既存の業務を代替するためにハードウェアを購入する意識の表れが強いためだ。

 3つ目に挙げられたオープンAPI型のサービスやソリューションが少ないというのもここに関連する。とかく連携が取れないシステムが多く、たとえばハードウェアとしてのPOSを導入した場合、あとからインバウンド対応をしたり、キャッシュレスと連動させたりということが難しくなる。先が閉じた投資になってしまうため、事業者は次のステップに進めないということがサービス産業のIT化ではおきていた。

 ではどうしていくべきなのか。大関氏はデータを中心に考え、さらに一元化する必要を説く。また、そのデータをつなげるコストを最小限にするためにAPI連携を重視した協業へシフトしていくべきだと語った。

 大関氏が率いるセカンドファクトリーのソリューション「BASE.S」はAzureベースの統合プラットフォームで、API連携を重視した協業モデル。ほかのプロダクトと協業することで、すべてのリクエストを満たすソリューションを実現している。

 このソリューションを用いることで、POSレジでデータが締められたらすぐに統合され、売り上げなどの細分化された情報を載せたURLをLINEに通知、経営者はすぐさま情報をチェックできる。会計システムなどとAPIで連携すれば、経理・財務の手間も省くことができる。こうしたシステムをパッケージ開発しなくても、ノーコーディングで設定だけで作れてしまうというのが、API連携を重視したソリューションの強みだ。さらに、その分野に強みを持つパートナーと連携することで、より使い勝手のいいソリューションにもなる。

 結果、人がやらなくてよかったことを見つけ、要らない仕事をなくすことができ、それが従業員満足度の向上につながる。システム導入は、あくまでユーザー体験をベースにしたものでなければ次のステップへはつながらない。

キャッシュレスサービスの現状

 このほか、今回は「サービス産業向け次世代技術EXPO・キャッシュレスTech」の説明会ということで、大関氏からスタジアムでの事例をもとに、キャッシュレスについての使用状況などについて語られた。

 例として出されたのは、試合開始前にアプリから購入することで、指定した時間にお弁当を受け取ることができる仕組みだ。購入時に並ぶ必要がなくなるだけでなく、ショップ側はある程度作る量を想定できるというメリットが生まれる。

 ではこうしたソリューションを観光地に活用したらどうか? と大関氏は提案する。観光地で食べたいものを調べたら情報が取得でき、そこでおみやげも買える。配送も指定できれば手ぶらで帰り、帰宅したときに届けてもらうという応用も考えられる。プラットフォーム化されている世界は、このように、ビジネスモデルを考える上でも重要となる。

 大関氏は、これまでは技術があってそこから人へ向う技術探求型のイノベーションが中心であったが、これを逆に考え、ユーザー起点イノベーションにすることを提案。キャッシュレスの技術があって、それをどうビジネスにするかではなく、このようなことをするためにキャッシュレスが必要であるという形で事業を計画していくことが重要だと語り、講演を終了した。

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